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体内に投与した免疫細胞の寿命はどのくらいですか?②
院長ブログ

2024年6月19日

前回のブログでは、体内に投与した免疫細胞は半永久的に働くという根拠を、当院の学術論文のデータに基づいてお話しました。今回のブログでは、抗がん剤の作用時間と比較しながら、私たちの論文報告以外で興味深い学術論文がありますので、ご説明させていただきます。

抗がん剤と免疫細胞の作用時間

■抗がん剤の場合

体外への排泄は非常に早いです。汎用されるゲムシタビン(※1)、パクリタキセル(※2、3)、ナブパクリタキセルの半減期(薬剤が体外に排泄され、血液中の濃度が半分になるまでの時間)で見てみましょう。

  • ゲムシタビン
    約30分
  • パクリタキセル
    約13時間
  • ナブパクリタキセル
    約30時間

上記より、作用する時間は数日以内、そして体内に残っている薬剤は極めて僅か、ということになります。

■免疫細胞治療の場合

体内に投与された細胞の作用は極めて長いです。それは、私たちの医療現場でも実際に経験しています。それを示す他の研究者の学術論文も多くありますので、次にご説明いたします。

論文③

人のT細胞を使った治療の中には、遺伝子を人工的に組み込んだT細胞を患者さんへ投与する治療があります。この治療では私たちが行っているアルファ・ベータT細胞療法と違い、もともとその患者さんに存在しているT細胞と治療に使ったT細胞とを容易に区別することができます。

下図は、そのような治療を受けた患者さんの体内に、どれくらいの期間、投与したT細胞が存在しているのかを調べた研究報告になります。2つの論文から引用しました。

図A

図Aの研究は先天的にADAという酵素が欠損した患者へADAの遺伝子を組み込んだT細胞を投与した研究です。治療を受けた患者を約10年間にわたって調査をしています。縦軸にADAという酵素の活性と、全リンパ球の中のADA遺伝子を組み込んだリンパ球の割合を示しています。10年間の間、変動はありますが、遺伝子を組み込んだリンパ球は存在し続けているのがわかります。

図B、C、D

図B、C、Dの研究はキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子を組み込んだT細胞を投与した研究です。
縦軸は遺伝子を組み込んだ細胞数、横軸は投与後の時間を年で表しています。7年から11年もの間、一部の減少したケースを除き、多くのケースで遺伝子を組み込んだ細胞が維持されていることがわかります。

数日で消滅する抗がん剤と、10年経ってもあまり減少しないT細胞とでは比較にならないと思います。

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◆院長ブログバックナンバー
-体内に投与した免疫細胞の寿命はどのくらいですか?①
-がん治療の効果の矛盾―②
-がん治療の効果の矛盾―①
-SNSと論文 ―科学的な情報発信―

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