術後合併症はがんなどの手術療法を受けた後に起きる症状や好ましくない状態のことです。代表的なものには創感染・感染症・痛みなどがありますが、手術を行う部位によっても起こり得る合併症の種類は異なります。
本記事では術後合併症の概要やがんの手術療法の概要、がんの手術療法の術後合併症の種類や晩期合併症、合併症のリスクを軽減する方法をまとめました。手術を受ける以上、術後合併症のリスクがあります。正しく合併症のリスクを理解した上で手術を受け、リスクを軽減できるようにしましょう。
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術後合併症とは?
術後合併症とは、手術を受けた後に起きる症状や何らかの好ましくない状態のことです。手術には大小さまざまなものがありますが、手術が大掛かりになればなるほど体への負担が大きくなるため、何らかの術後合併症が起きる可能性があります。
がんの治療では手術療法が行われることもありますが、この場合も術後合併症が起きるリスクが高いです。がんの手術で起こり得る術後合併症の種類は後述しますが、種類や重症度に合わせて適切な処置を行わなければなりません。
がんの手術療法について解説
がんの手術療法は、手術によってがん細胞を切除するがんの標準治療の一つです。
がんが最初にできた原発巣だけにとどまっており、大きな広がりや転移がなければ、手術療法によってほとんど全てのがん細胞を取り除けます。がんが広範囲に広がっている場合やその他の臓器に転移がみられる場合、原発巣だけでなく周辺のリンパ節や転移が見られた臓器の切除も必要です。がん細胞を切除することによって臓器の働きにも影響が出る場合は、機能を回復させるための再建手術も同時に行われる場合があリます。
手術療法の方法
がんの種類やがんの状態によっても異なりますが、メスを使って皮膚や皮下脂肪、筋膜、胸膜、腹膜などを切開した後、がんの病変を確認します。その後、止血を行いながら病変部を取り除き、必要に応じて臓器の再建手術を行って縫合するのが一般的です。手術には麻酔が用いられますが、手術の規模などに応じて局所麻酔・区域麻酔・全身麻酔などの中から適した麻酔が選択されます。
目視でがんを確認しながら切除することもあれば、皮膚に開けた小さな穴から腹腔鏡や胸腔鏡を挿入し、モニターでがんを確認しながら手術する方法もあります。小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術の方が、体への負担が少ないです。最近はロボットを使った腹腔鏡手術も行われています。
従来はがんの病変部とその周辺を大きく切除する「拡大手術」が一般的でした。拡大手術はがんの再発や転移を防止できるものの、体への負担も大きく、術後合併症などのリスクが高いことが課題となっていました。近年は術後の体への影響を最小限にとどめ、生活の質を維持するために、早期のがんに対しては最低限の切除を行う「縮小手術」も積極的に行われています。
がんの手術療法において懸念される術後合併症の種類
がんの手術療法において、どのような術後合併症が起きる可能性があるのでしょうか。代表的な合併症の種類をご紹介します。
1. あらゆるがんの手術療法で起きる可能性がある術後合併症
がんのある部位にかかわらず、手術療法を受けて起きる可能性がある術後合併症をご紹介します。
(1)創感染
創感染とは切開・縫合箇所で起きる感染のことです。創感染が起きると患部が赤く腫れ、悪化すると膿が出たり発熱や痛みが起きたりすることもあります。
(2)感染症
術後感染症とは,手術操作や手術に付随する患者管理 手段に関連して術後に発生する感染症の総称であり,広義の「創感染」(または「術野感染」)と,「創外感染」 (ま たは「術野外感染」)に分類される。
(3)痛み
手術中は麻酔が効いているので痛みを感じる心配はありませんが、術後麻酔が切れると痛みが現れます。術後の痛みには、鎮痛剤での対応が可能です。
(4)深部静脈血栓症・肺塞栓症
手術中から手術後にわたって長時間体を動かさないことにより、脚の静脈に血栓ができ、血栓が血流とともに肺に流れて肺の血管に詰まってしまうことがあります。いわゆるエコノミー症候群と呼ばれる症状です。
(5)せん妄
せん妄とは体に過度の負担がかかった際に、起きる急性脳機能不全のことです。意識に混乱が生じ、一時的に幻覚症状や記憶障害が起きる他、興奮状態になったり不眠になったりすることもあります。
2. 部位ごとに起きる可能性がある術後合併症
手術によって起きる可能性がある術後合併症は部位ごとに異なります。
(1)腹部
腹部で起きる代表的な術後合併症は以下の通りです。
- 術後出血:腹腔内で出血が起きる
- 縫合不全:腸と腸の縫合が適切に行われず、腹腔内で腸液が漏れ出す
- 腸閉塞:腸管内で飲食物や消化液などが詰まる
- 膵液漏:膵臓と腸の結合部から膵液が漏れ出す
(2)頸部・食道
頸部・食道で起きる代表的な術後合併症は「嗄声(きせい)」です。声帯をコントロールする反回神経の周辺を手術すると、一時的に声がかすれることがあります。
(3)肺
肺で起きる代表的な術後合併症は以下の通りです。
- 肺炎:細菌やウイルスによって肺に炎症が起きる
- 肺瘻(はいろう):肺の切開部分から空気が漏れる
- 膿胸(のうきょう):胸腔内に膿がたまる
- 肺閉塞:静脈でできた血栓が肺動脈を詰まらせる
- 気管支断端瘻:気管の切開部分から空気が漏れる
3. 麻酔によって起きる可能性がある術後合併症
麻酔によっても、術後合併症が起きることがあります。代表的な麻酔による術後合併症は以下の通りです。
- 吐き気
- 嘔吐
- 頭痛(脊椎麻酔・全身麻酔)
- 喉の痛み(人工呼吸器を使用する全身麻酔)
- 声のかすれ(人工呼吸器を使用する全身麻酔)
- 歯の痛み(人工呼吸器を使用する全身麻酔)
- 唇の腫れ・傷(人工呼吸器を使用する全身麻酔)
- 寒気
- 発熱
- 喉の乾き
- 術後痴呆
- せん妄
- 脳梗塞
- アレルギー反応
- 悪性高熱症
- 肺塞栓症
- 術後神経麻痺(脊椎麻酔)
- 硬膜外腔の感染・膿瘍・血腫形成(硬膜外麻酔)
がん手術療法の晩期合併症リスクについて解説
がんの手術療法を受けると、治療終了から数カ月後・数年後に起きる「晩期合併症」のリスクもあります。
晩期合併症の種類は多岐にわたりますが、がんの種類や治療法によっても異なります。手術療法だけでなく、放射線治療や薬物治療でも起きる合併症です。
代表的な晩期合併症は以下の通りです。
- 成長発達の異常
- 内分泌異常
- 発育不全
- 無月経
- 不妊
- 肥満・痩せ
- 糖尿病
- 中枢神経系
- 白質脳症
- てんかん
- その他の臓器
- 心機能異常
- 呼吸機能異常
- 肝機能異常
- 肝炎
- 免疫力低下
- 二次がん
- 白血病
- 脳腫瘍
- 甲状腺がん
- その他のがん
また身体的に何らかの異常が起きるだけでなく、精神的に影響が出るケースもあります。それによって生活に支障が出てしまうケースも少なくありません。
晩期合併症は成人でがんの手術療法を受けた場合でも起きますが、特に小児がんの治療を受けた方や若い世代でがん治療を受けた方に起きやすいです。治療終了から何十年もたって症状が現れることもあるため、長期的に経過観察が必要になるケースもあります。
合併症・晩期合併症のリスクを軽減する方法
がんのステージや状態などによっては手術療法で高い効果が期待できますが、手術によって体に大きな負担がかかるため、前述したような合併症や晩期合併症のリスクがあります。
合併症や晩期合併症のリスクを軽減するには、どのような方法があるのでしょうか。3つの方法をご紹介します。
1. 医師の指示に従う
がんの手術を受けた後は、医師の指示に従いましょう。
一口にがんの手術といっても術式はさまざまです。また同じ手術だとしても、患者さんによって術後の状態や回復のスピードは異なります。
場合によっては翌日から軽く体を動かすことが可能です。しかしまだ体を動かすべきでないのにもかかわらず医師の指示を無視してしまえば、合併症が起きたり術後の経過が悪くなったりする可能性があります。
ご自身では問題ないように思える行動でも、合併症や晩期合併症のリスクを高めてしまうかもしれません。スムーズに回復するためにも、術後は必ず医師の指示に従うようにしましょう。
2. リハビリテーションをしっかり行う
リハビリテーションとは、手術によって低下する体の機能回復や免疫力の回復、体力の回復を目的として、手術前後に行われるものです。
手術前からリハビリテーションを実施し、術後にも行うことで、合併症や晩期合併症のリスクを軽減できる他、早期回復にもつながります。適切なリハビリテーションは、がんの種類や手術前の健康状態、年齢などによっても異なりますが、合併症・晩期合併症のリスクを軽減するために、医師の指示の下、適切なリハビリテーションを行うようにしましょう。
術後にベッドから離れ、自分で歩けるようになることを「離床」と言います。自分の足で歩いて行う「離床リハビリテーション」は、深部静脈血栓症や肺塞栓症、感染症などの予防に効果的な他、体力の回復にも効果的です。医師や看護師の指示に従って、まずは自分の足で立ち、可能であれば歩く練習を始めましょう。問題なく歩けるようであれば、少しずつ離床リハビリテーションを行う時間を増やします。
肺や腹部のがんの手術療法を受けた場合、術後に肺活量が低下することがあります。肺活量が落ちたままだと合併症のリスクが上がってしまうので、肺や腹部のがんの場合は術前から「呼吸リハビリテーション」が行われることが多いです。
体力があるかないかで合併症のリスクは大きく変わってきます。そのため、術前・術後に「筋力・持久力トレーニング」が行われることが多いです。患者さんの病状や年齢、元々の体力によって行われる内容は異なります。体力を高めることで、術後の回復もスムーズになるでしょう。
3. 免疫療法を受ける
免疫療法とは元々人が持っている「免疫」を応用した治療法で、免疫は体外からの異物の侵入を防ぎ、侵入した異物を排出する力のことです。この免疫を生かした免疫療法はがん細胞のみを攻撃するため、正常な細胞へのダメージを防ぐことができ、治療後の副作用が比較的少ないとされています。
免疫療法はがんの標準治療ではないものの、第四のがん治療として注目を集めている治療法です。手術療法をはじめとした標準治療との併用が可能で、併用することで相乗効果が期待できます。
代表的な免疫療法は以下の通りです。
- 免疫チェックポイント阻害剤:がん細胞が免疫細胞からの攻撃をブロックする仕組みを薬によって阻害する
- 免疫細胞治療:体内から取り出した免疫細胞を増殖・活性化させて再び体内に戻しがんを攻撃する
- サイトカイン療法:がん免疫を向上させる効果を持つサイトカインを合成して投与する
- 免疫賦活剤:がん免疫を高める効果が期待できる薬剤
免疫療法は副作用が起きる可能性が全くないわけではありませんが、ほとんどの場合症状は一時的です。手術療法が難しい全身に転移したがんの治療にも対応できます。また体への負担を軽減できる治療のため、高齢の方など十分に体力がない方でも治療を受けることが可能です。
術後合併症・晩期合併症のリスクを軽減しよう
本記事では術後合併症の概要やがんの手術療法の概要、がんの手術療法の術後合併症の種類や晩期合併症、合併症のリスクを軽減する方法を解説しました。がんの手術療法はがんを取り切れる可能性があるものの、体への負担が大きく、合併症や晩期合併症のリスクも高くなります。手術療法を受ける場合は、術前・術後の医師からの指示を守り、リハビリテーションを適切に行うように心掛けましょう。
がん免疫細胞治療専門医療機関「瀬田クリニック東京」では、治療を受ける方の体質や病状に合った治療法を選択する個別化がん免疫療法を行っています。徹底した個別化医療を追求し、複数の治療法の中から患者さんお一人おひとりのがん細胞の特徴に適した免疫細胞治療の選択・提供を実現しています。ぜひ瀬田クリニック東京へご相談ください。
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