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光免疫療法とは?保険は適用されるの?光免疫療法のメリットや対象のがんの種類を解説

投稿日:2024年11月8日

更新日:2024年11月8日

ご自分の体にがんが見つかった場合、少しでも体に負担をかけずに治療を進めていきたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般的ながん治療としては、手術でがんを除去したり、抗がん剤治療を行ったりする方法などがあるものの、場合によっては患者さんの体に負荷がかかってしまう可能性も否めません。そのため、最近ではがん細胞だけを攻撃し、体への負担を軽減できる光免疫療法が注目されています。

本記事では、光免疫療法の概要や保険適用の有無、メリットやデメリットなどを解説します。

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光免疫療法とは?

光免疫療法とは、光感受性物質を結合させたがん細胞の抗体(タンパク質)にレーザー光を当て、がん細胞を攻撃する治療法です。

現在日本で行われているがんの治療法は主に以下の4つで、これらはがんの四大治療法と呼ばれています。

  • 化学療法(抗がん剤治療)
  • 放射線療法
  • 手術療法
  • 免疫療法

光免疫療法は、上記の4つに続く5つ目の新しいがん治療法として2020年に国から認められました。がん治療は常に研究が進められており、光免疫療法はその一環として期待されています。

『家族を守る免疫入門(著:後藤重則)』
第4章「がんを撃退する免疫療法の最前線」より参照

光免疫治療の流れ

光免疫治療は、まずIR700と呼ばれる光感受性物質を複合させたアキャルックスを患者さんに点滴で投与します。アキャルックスとは、米国がん研究所の小林久隆主任研究員と楽天メディカル株式会社が開発した薬剤です。

アキャルックスを投与すると、IR700ががん細胞のみと結合します。アキャルックスとがん細胞が結合したところに特定のレーザー光を当てると、光感受性物質が活性化され、活性酸素が発生します。この活性酸素によってがん細胞の細胞膜が破裂し、がん細胞自体が死滅する仕組みです(※)。

従来の治療法と異なり、光免疫治療はがん細胞のみをターゲットとしているため、正常な細胞をほとんど傷付けずに治療が可能となります。

ただし、全てのがん治療に使用できるわけではなく、適応範囲には限りがあります。具体的な光免疫療法の効果や適応性については、今後も検証が必要です。

※参考:楽天メディカル株式会社.「アキャルックス®とレーザー光照射による治療とは」.
https://hcp.rakuten-med.jp/akalux/treatment/about/,(参照 2024-08-26).

光免疫療法は保険適用される?

光免疫療法は、2020年に厚生労働省によって新たな治療法として承認され、2021年1月から限られた条件下で保険適用の対象となりました。

現時点で保険の対象とされるがんの種類は「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」です。その中でも、放射線療法や化学療法などの従来の治療法では対処が難しい場合が対象となります。

頭頸部がんとは、主に口の中、喉、鼻、耳、喉頭(声帯)、およびその周辺の組織に発生するがんです。口腔がんや咽頭がん、喉頭がんなどが含まれます。

なぜ頭頸部がんのみが保険適用なのかは、米国や日本での臨床検査で、光免疫療法が頭頸部がんに有効だと確認が取れたためです。国立がん研究センターによると、光免疫療法による頭頸部がん治療の成績は、日本と海外で異なる結果が出ています。国内では治療を受けた3例のうち2例が、海外では30例のうち13例が腫瘍の縮小に成功したと診断されました(※)。

保険適用の拡大については現在も研究や臨床試験が進められており、将来的には他のがんにも適用されることが期待されています。

※参考:国立がん研究センター.「がん光免疫療法全般に関する Q&A」.”Q:頭頸部がんの治験の成績が知りたい”.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2024/rakutenQA_20240828.pdf

光免疫療法のメリット

光免疫療法は、患者さんのQOL(生活の質)を維持しながら治療が行える革新的な治療法です。

主なメリットは以下の3つです。詳しく見ていきましょう。

1. がん細胞のみに作用するため、体の負担が掛かりにくい

光免疫療法はがん細胞に特異的に作用し、部分的にレーザー光で破壊する治療法のため、正常細胞へ影響が及ばず体への負担が軽減されるのが特徴です。

手術療法や放射線療法などの従来の治療法は、がん細胞だけでなく周囲の正常な細胞も攻撃してしまうデメリットがあります。攻撃した細胞ががん細胞を撃退できる正常細胞だった場合、体の免疫機能の低下や吐き気、倦怠感などの副作用が発生する可能性も考えられます。

がん細胞のみを死滅させ、周囲の正常な細胞を傷付けない光免疫療法なら、体への負担を軽減しながら治療が可能です。

ただし、どれくらいの副作用が発生するかは患者さんの状態やがんの種類によって異なるため、医師との相談が必要です。

2. 体の免疫が活性化され、全身の治療にもつながる

光免疫療法は、局所的にがん細胞をターゲットにして破壊するだけでなく、その治療過程で全身の免疫機能を向上する作用があります。

全身治療として作用する仕組みは、以下の通りです。

  1. 光免疫治療法のレーザー光によって、がん細胞が破壊される
  2. がん細胞内のがん抗原が体内に放出される
  3. 放出されたがん抗原は、正常な免疫細胞に取り込まれる
  4. がん抗原を認識した免疫系が活性化され、がん細胞をさらに攻撃できる

この仕組みによって免疫機能が強化されると、レーザー光を当てた後にがん細胞が残ってしまった場合でも体の免疫系がより強力に反応し、残ったがん細胞をさらに攻撃してくれます。

光免疫療法は、がん細胞を直接破壊する役割を果たす治療法であると同時に、体の免疫機能を活性化させる作用も持っています。

3. 入院せずとも治療を進められる

光免疫療法の大きなメリットは、入院せずに外来で治療を受けられる点です。(※治療後、一定期間は入院が必要になる場合があります)

一般的に光免疫療法を含む免疫治療は、比較的短時間で終了し、体への負担も少ないです。そのため、患者さんは生活リズムや質を崩すことなく治療を継続できます。

また外来治療の場合は入院に伴う経済的負担やストレス、不安を軽減できます。家族や友人との時間も確保でき、社会とのつながりを維持しやすいため、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることも可能です。

しかし治療の実施には医師の判断が必要であり、患者さんの体調や体の状態によっては入院が推奨される場合があります。医師と相談の上、治療の進め方を決めていくことが重要です。

光免疫療法のデメリット

光免疫療法は体に優しい治療法ですが、一方でデメリットもあります。

光免疫療法の主なデメリットは、以下の通りです。

1. 必ずしも副作用が出ないとは限らない

光免疫療法は従来の治療法と比べて副作用が少ないとされていますが、完全に副作用が出ないとは限りません。

光免疫療法に使用するアキャルックスを開発した楽天メディカル株式会社のホームページに明記されている副作用は、以下の通りです(※)。

副作用 症状
出血 がん細胞の死滅によって、治療部分やその周囲の血管から出血が起こる(※命に関わるため注意が必要)
舌の腫張・喉のむくみ 治療部分やその周囲の針を指した部分がむくんだり、腫れたりする(治療ではレーザー光を当てるために針を当てる)
食事に影響が出る他、呼吸がしづらくなる場合もある
インフュージョンリアクション アキャルックスの投与後24時間以内に以下のアレルギーのような症状が出る場合がある
・寒気
・めまい
・気管支けいれん
・じんましん
・低気圧
・意識の消失
・ショック
・胸痛(押さえ付けられる感覚)など
瘻孔(ろうこう)
皮膚・粘膜の潰瘍(かいよう)や壊死(えし)
レーザー光を当てた部分に瘻孔や潰瘍が起きて痛みを伴う
皮膚の壊死によって感覚がなくなる
※瘻孔:組織に穴が空いた状態、骨が見えている状態
※潰瘍:皮膚に穴が空く
※壊死:皮膚が黄色~黒色に変色したり、黒みがかった茶色に変色してはがれおちたりする症状
光線過敏症 アキャルックスに含まれる光感受性物質が日光に反応し、皮膚が赤くなる
皮膚や眼に痛みが起こる場合もある
皮膚障害 肌にぶつぶつとした皮疹ができる
痛み 治療部分に痛みが生じる

これらの副作用は一時的なものとされていますが、状況は患者さんによって異なります。上記の副作用が出たり、何らかの異常を感じたりしたときは、治療を受けた医療機関にすぐに相談してください。

※参考:楽天メディカル株式会社.「アキャルックス®点滴静注とレーザー光照射による治療を受ける患者さん・ご家族の皆さま」.”注意すべき副作用”.
https://pts.rakuten-med.jp/akalux/sideeffect/,(参照 2024-08-26).

2. 治療後は直射日光を避ける必要がある

光免疫療法でアキャルックスを投与した後は、直射日光や強い光を避けて生活しなければなりません。光免疫療法では光感受性物質が使用されるため、治療後に日光や強い光にさらされると、治療部位や皮膚に過敏反応が生じる可能性があります。前述の副作用の解説で記載したように、この過敏反応を「光過敏症」と呼びます。

光を避けて生活する期間は治療後4週間で、4週間経過後からは徐々に通常の生活に戻していく流れです(※)。

この治療後4週間は基本的に室内で過ごし、照明は標準的な明るさにします。また、間接照明などの部分的に強い光が出るものは、光過敏症を引き起こす原因にもなるため使用を控えなければなりません。

また、肌が露出しないよう服装にも注意する必要があります。服装の例は以下の通りです。

  • 広いつばの帽子やスカーフで頭や首を覆う
  • 長袖と長ズボンを着用して肌を隠す
  • サングラスで目と周辺の皮膚を保護する
  • 手袋や靴下で細かい部位まで隠す
  • 足の甲を隠せる靴を履く

服装の制限は一時的ではありますが、治療後は光過敏症を起こさずに治療を効率的に進めるためには必要な対策です。

※参考:楽天メディカル株式会社.「アキャルックス®点滴静注とレーザー光照射による治療を受ける患者さん・ご家族の皆さま」.“光線過敏症アキャルックス®投与後”.
https://pts.rakuten-med.jp/akalux/sideeffect/,(参照 2024-08-26).

3. 光が届かない部位の治療は不可能

光免疫療法はレーザー光を使用する治療法のため、光が届かない部位にがん細胞がある場合、その治療は不可能です。例えば、深部にあるがんや内臓に隠れた部位のがん細胞にはレーザー光が届かず、効果を発揮できません。

現時点で光免疫療法が認められているのは頭頸部がんのみですが、今後の研究次第ではがんの位置や種類にかかわらず光が届くようになる可能性もあります。

光免疫療法が有効とされるがんの種類

現在の日本における光免疫療法が有効とされるがんの種類は「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部扁平上皮がん」のみです(※)。つまり、手術で取り除けない、または再発した頭頸部の扁平上皮がんだけに光免疫療法が適応されることになります。

頭頸部がんとは、口腔や喉、鼻、副鼻腔などの領域に発生するがんで、この領域に脳や目は含まれていません。頭頸部がんの主な種類は、以下の通りです。

  • 口腔がん:舌や頬、歯茎などの口内に発生するがん
  • 咽頭がん:鼻の奥から食堂までの管で発生するがん(上咽頭・中咽頭・下咽頭など)
  • 喉頭がん:喉の声帯部分に発生するがん(声門上がん・声門がん・声門下がんなど)
  • 唾液腺がん:唾液を分泌する大唾液腺や小唾液腺に発生するがん
  • 鼻腔がん・副鼻腔がん:鼻内部の鼻腔や副鼻腔に発生するがん
  • 頸部食道がん:喉ぼとけから胸骨上縁にある頸部食道に発生するがん
  • 甲状腺がん:喉の気管前にある甲状腺に発生するがん

頭頸部は内視鏡でも見やすいため、光免疫療法の効果を感じやすい部位です。

とはいえ、光免疫療法は従来の治療法でがんが取り除けなかった場合に適用される治療法のため、始めから光免疫療法を選択できない場合があります。ご家族や医師と相談しながら治療の方向性を決めていきましょう。

光免疫療法が受けられる医療機関は、アキャルックス薬剤を開発した楽天メディカル株式会社のホームページに掲載されています。光免疫治療でのがん治療をご検討されている場合は、こちらから医療機関をご確認ください。

※参考:国立がん研究センター.「がん光免疫療法全般に関する Q&A」.“Q:対象のがんは何か”.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2022/NCCHE_AlluminoxQA_20220704.pdf,(参照 2022-07-04).

光免疫療法以外で体への負担が少ないがん治療法はある?

光免疫療法は限られた条件のもとでしか受けられない治療法のため、場合によっては他の治療法で対応する必要があります。

光免疫療法以外で体への負担が少ない治療をお考えの方は、免疫療法もご検討ください。免疫療法は、人間が持つ免疫の力を活用してがん細胞を攻撃する第4のがん治療法です。

免疫療法と一口に言っても様々な種類があります。ここでご紹介するのは「免疫チェックポイント阻害薬」という薬を使った免疫療法になります。具体的には、がん細胞には「異物を攻撃するな」というアンテナがあり、T細胞の攻撃から逃れることができます。免疫チェックポイント阻害薬はこのアンテナに作用し、T細胞にブレーキがかかるのを防ぎます。つまり、がん細胞を攻撃する力を高めます(※)。

光免疫治療と同様に正常な細胞を傷付けずに自然治癒力で治療を進めていくため、体への負担が掛かりにくいです。また、手術や放射線療法などとも組み合わせて実施できるメリットもあります。

なお、免疫チェックポイント阻害薬で治療できる主ながんは、以下の通りです(※)。

  • メラノーマ(悪性黒色腫)
  • 非小細胞肺がん
  • 腎細胞がん
  • ホジキンリンパ腫
  • 頭頸部がん
  • 胃がん
  • 悪性胸膜中皮腫

他にも、エフェクターT細胞療法と呼ばれる治療法があります。エフェクターT細胞療法とは、患者さんから取り出した免疫細胞(T細胞)を採血で体外に取り出し活性化させた後、再び点滴や注射などで体内に戻す治療法です。

また一部の血液やリンパのがん治療では、CRA-T療法が選択される場合もあります。CRA-T療法は、患者さんのT細胞を攻撃力が高いCRA-T細胞に遺伝子改変して増やし、再び体内に戻す治療法です。

免疫治療は体にメスを入れずに体内から治療していくため、体への負担は少ないですが、患者さんによっては副作用が出る可能性もあります。主な症状は、発熱や頭痛、息切れ、吐き気などです(※)。もしこれらの症状が発症した場合は、すぐに医療機関の担当医に相談してください。

また免疫治療は比較的新しい治療法のため、公的保険が適用されない場合があります。治療費用や保険の適用範囲についても担当医に確認しましょう。

当院でも免疫治療を行っており、患者さんお一人おひとりに合わせた個別治療プランをご提案しています。初期段階のがんだけではなく、進行がんや再発がんの患者さんにも受診していただけます。当院の免疫治療は、基本的に入院が必要なく外来通院での治療が可能です。「相談したいけれど、どの病院を受診すれば良いか分からない」とお困りの方は、ぜひ長年の治療実績を持つ瀬田クリニックにご相談ください。

免疫細胞治療について詳しくはこちら

※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.“免疫療法 もっと詳しく”.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html#003,(参照 2024-09-05).

光免疫療法の保険適用の有無は医師に確認しよう

光免疫療法は、体に優しいがん治療法として近年注目されています。しかし、新しい治療法であるため、現時点では保険適用の条件が限られています。今後の研究や医療の発展によって保険適用の範囲が広まる可能性がありますが、詳細は医師と相談し、ご自分のお体の状況に応じた治療法を選択することが大切です。

とはいえ、どの病院でがん治療を進めていくか迷われる患者さんもいるのではないでしょうか。

悩まれた場合は、ぜひ瀬田クリニック東京にご相談ください。瀬田クリニック東京は1999年の開院以来、がん治療の知見や技術を駆使しながら、患者さんお一人おひとりに合わせた治療法を提案してきました。国内初のがん免疫細胞治療専門医療機関として、当院の様々な治療法の中から患者さんにとって最適な治療法を見極め、治療をご提供しております。体に優しいがん治療をお考えの方は、ぜひ当院にご相談ください。

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