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がん免疫療法における受動免疫・能動免疫とは?治療法の種類や特徴を解説

投稿日:2024年10月25日

更新日:2024年10月25日

これまで、がんの療法は手術療法、化学療法、放射線療法の三つが主流とされてきましたが、近年は第四の療法としてがん免疫療法に注目が集まっています。

がん免疫療法とは、人に本来備わっている免疫力を高め、がんの治療を目指す療法のことです。がん免疫療法には受動免疫療法と能動免疫療法の二つがあり、それぞれ仕組みや特徴に違いがあります。

本記事では、がん療法における受動免疫と能動免疫の概要や、それぞれの種類と主な特徴、詳しい治療法について解説します。

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受動免疫と能動免疫とは? 基本的な知識を解説

受動免疫と能動免疫はどちらも免疫の一種ですが、仕組みや特徴に違いがあります。まず能動免疫とは、毒性を完全になくした、あるいは弱めた病原体の一部(ワクチン)などを投与し、特定の病原体に対する免疫を獲得・強化する治療法のことです。

人の免疫には、生まれつき備わっている自然免疫と、一度体内に侵入した病原体の情報を記憶する獲得免疫の2種類があります。受動免疫は後者の獲得免疫の仕組みを利用するもので、ワクチンの接種によってがん細胞に対する免疫力を強化することが目的です。

がん免疫療法においては、樹状細胞療法やサイトカイン療法、非特異的免役賦活薬を用いた療法などがこれに該当します。

一方の受動免疫とは、特定のウイルスや細菌に対する抗体を作り、患者さんに投与する方法のことです。がん免疫療法では、がん細胞の増殖に関与する分子を阻害する抗体を投与するか、あるいはがんを攻撃するリンパ球やナチュラルキラー(NK)細胞などを体外で活性化させ、体内に戻す方法などが用いられます。受動免疫は病原に対して免疫系が十分に反応しない場合に適用されるのが一般的です。

なお、それぞれの免疫療法はターゲットによって特異的免疫療法と非特異的免疫療法の2つに分類されます。前者はがん細胞だけが持つ抗原(がん特異的抗原)をターゲットにするもの、後者は生体の免疫能全般をターゲットにするものです。

能動免疫療法の場合、特異的免疫療法ではワクチン療法や樹状細胞療法、非特異的免疫療法では免疫賦活薬やサイトカイン療法などがあります。

一方、受動免疫療法の場合、特異的免疫療法として挙げられるのは腫瘍浸潤リンパ球療法や腫瘍障害性リンパ球療法、非特異的免疫療法として挙げられるのがLAK療法やNK療法などです。

それぞれの種類について、詳しくは後述します。

受動免疫と能動免疫の主な種類と特徴

前述の通り、受動免疫と能動免疫はそれぞれ複数の種類に分かれています。ここでは受動免疫・能動免疫の主な種類と特徴をまとめました。

1. 受動免疫の主な種類

がん免疫療法における受動免疫の主な種類を5つ挙げて説明します。

(1)腫瘍組織浸潤リンパ球療法(TIL療法)

腫瘍組織浸潤リンパ球療法とは、患者さん本人のがん組織に含まれる腫瘍組織浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte:TIL)という免疫細胞を採取し、体外で培養してから体内に戻す特異的免疫療法の一種です。免疫細胞の頭文字を取ってTIL療法とも呼ばれています。

TIL療法は1980年代より進行悪性黒色腫に対して採用され、国内外でその治療効果が複数報告されてきました。特に注目を集めたのは、TIL療法によって消滅したがんが再発せず、完治する可能性がある点です。実際、過去にはがんが消失した後、5年以上再発していないケースも報告されています。

ただ、TIL療法にはTILを培養するための技術が必要であることから、世界的にも実施例が少ないといわれています。

(2)細胞障害性リンパ球療法(CTL療法)

細胞障害性リンパ球療法とは、がん細胞に攻撃する作用を持つ細胞障害性リンパ球を体外で培養し、体内に戻すことで治療を目指す特異的免疫療法の一つです。細胞障害性リンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte)の頭文字を取ってCTL療法とも呼ばれています。

正常な細胞にはなく、がん細胞のみに存在するがん抗原を攻撃のターゲットにするため、CTLを培養・増殖して体内に投与することで、効率的ながん治療効果を期待できます。

ただし体外でCTLを培養するのは難しく、成功率が低いことから、まだ実用的な水準に至っていないというのが現状です。

(3)LAK療法

LAK療法とは、白血球の中にあるリンパ球を体外で増殖させ、体内に戻すことで治療を目指す非特異的免疫療法で、別名は活性化リンパ球療法です。LAK療法はがん免疫療法の原点ともされている治療法で、1985年に米がん研究所の所長が報告したのが創始とされています。

初期の療法は副作用が大きい上に、効果も小さいなど課題が山積みでした。しかし後述する活性化T細胞療法やNK療法の基礎になったことや、樹状細胞ワクチン療法と組み合わせることでより高い抗がん作用を期待できることなどから、現在はがん免疫療法の選択肢の一つとなっています。

(4)活性化T細胞療法

活性化T細胞療法とは、血液から採取したリンパ球を体外で培養・活性化させ、静脈を通して体内に戻す非特異的免疫療法です。T細胞にはもともとがん細胞を発見し、攻撃する能力が備わっていますが、体外で培養・活性化することによってさらに強い攻撃力を発揮するようになります。

活性化T細胞療法は免疫療法の草創期である1970年代に既に実施されていましたが、細胞培養技術の発展に伴い、年々進歩・発展してきた療法となっています。

(5)NK療法

NK療法とは、白血球中のナチュラルキラー細胞(NK細胞)を培養し、体内に戻してがんの治療を目指す非特異的免疫療法です。NK細胞はがん細胞やウイルス感染細胞などを発見し次第、攻撃する能力を持つリンパ球の一種で、生まれつき人に備わっている自然免疫において重要な役割を担う細胞とされています。

がん細胞は、CTLの攻撃を防ぐために、CTLがターゲットとするMHCクラスⅠ(全ての有核細胞の表面に発現するもの)を隠すことがあります。しかしNK細胞はNKG2Dと呼ばれるNK細胞受容体をターゲットにできるため、MHCクラスⅠを隠したがん細胞の攻撃が可能です。

さらに、がん治療に使用されている薬剤の作用を高める能力もあることから、抗体製剤との併用で相乗効果を期待できるというメリットもあります。

2. 能動免疫の主な種類

がん免疫療法における能動免疫の主な種類を5つ挙げて説明します。

(1)ワクチン療法

ワクチン療法とは、がん細胞から取り出したがん抗原を直接投与し、人に備わっている免疫系を活性化させる療法です。接種した抗原はあくまで免疫系を活性化させる媒体に過ぎないため、ワクチン療法を行った患者さんの体内でどれだけ免疫系が活性化されるかが大きなポイントになります。

これまでがん抗原を用いた臨床試験は複数実施されており、一定の効果が確認されています。

(2)樹状細胞療法

樹状細胞療法とは、体外で育てた樹状細胞にがんの目印をあらかじめ認識させた上で体内に戻し、がんの治療を目指す特異的免疫療法です。

樹状細胞とは木の枝に似た細胞突起を持つ免疫担当細胞の一種で、がんやウイルスなどの異物を発見すると、その抗原情報をT細胞に提示し、免疫の獲得を引き起こす役割を担っています。樹状細胞療法によってがんの目印を認識させられた樹状細胞は、T細胞にその情報を提示し、T細胞は全身を巡ってがん細胞を攻撃するようになります。そのため、がんの原発巣だけでなく、転移しているがん細胞にも有用な効果を発揮するところが特徴です。

また、T細胞にがん抗原の情報を認識させるという性質上、その情報が記憶されている間は延々とがん細胞を攻撃し続けるため、長期間にわたる効果を期待できるのも大きな利点です。

(3)免疫賦活剤

非特異的免役作用を高める作用を持つ免疫賦活剤を使用した療法があります。免疫賦活剤は微生物やキノコなどから抽出した成分で作られており、古くからがんを初めとするさまざまな病気の療法として用いられてきました。

単体で使用されるケースは少なく、一般的にはがんの三大治療(手術・薬物・放射線)と組み合わせて投与されます。

(4)サイトカイン療法

サイトカイン療法とは、サイトカインと呼ばれるたんぱく質の一種を投与し、免疫細胞を活性化させる非特異的免疫療法です。サイトカインとは免疫系細胞から分泌されるたんぱく質の総称で、細胞間の情報伝達を行う役割を担っています。

サイトカインにはさまざまな種類がありますが、がん免疫療法では免疫調整や炎症反応への生体防御などに関与するインターロイキン、NK細胞などの活性化に関わるインターフェロンなどが代表的です。実際の療法では、患者さんに対して免疫チェックのための採血を行い、改善が必要な免疫システムを明らかにした上で、人工的に合成されたサイトカインを投与します。

(5)免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬とは、人の免疫ががん細胞を攻撃する力を保つために用いられる薬剤です。免疫系であるT細胞の表面には、異物への攻撃をやめる命令を受け取るアンテナがありますが、がん細胞はこのアンテナに自身のアンテナを結合させ、異物を攻撃しないよう命令する作用があります。

命令を受けたT細胞は異物への攻撃にブレーキを掛けてしまうため、がん細胞を排除する能力が低下してしまいます。こうしたメカニズムを免疫チェックポイントといいますが、この仕組みを妨げるのが免疫チェックポイント阻害薬の役割です。

免疫チェックポイント阻害薬には複数の治療薬がありますが、そのうちのいくつかは国内でも承認されています。悪性黒色腫や腎細胞がん、食道がん、胃がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がんなどさまざまながんの治療に用いられています。

受動免疫と能動免疫の治療法

受動免疫や能動免疫の実際の治療法は、療法の種類によって異なります。例えば受動免疫療法の一種であるTIL療法の場合、以下のような流れで治療を進めていきます。

  1. 患者さんの体内から病巣を切除し、病巣に浸潤しているT細胞を抽出する
  2. 腫瘍を認識するTILを選択・誘導し、培養して増殖する
  3. 患者さんの体内に増殖したTILを戻す
  4. T細胞増殖因子であるIL-2を複数回にわたって投与する

一方、能動免疫療法の一つである樹状細胞療法の場合は、以下のような流れで治療を進めていきます。

  1. 樹状細胞療法を行うための成分採血を実施する
  2. 採取した血液から単球のみを取り出し樹状細胞に育てる樹状細胞に抗原を取り込ませ、がん細胞の特徴を記憶させる
  3. 記憶させた樹状細胞を患者さんの体内に投与する

なお、同じ療法であっても、治療を実施する医療機関によって治療法や流れが異なることがあります。

例えば瀬田クリニック東京では、樹状細胞療法の中でも、オーダーメイドがんワクチンであるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンを用いた治療を行っています。ネオアンチゲンとは、がん細胞のみが保有するがん固有の抗原のことで、その特徴は患者さんごとにさまざまです。

このネオアンチゲンの性質を応用し、患者さん一人ひとりに適したネオアンチゲンを作製して使用するのがネオアンチゲン樹状細胞ワクチンです。その患者さんにしか存在しないネオアンチゲンを見つけ出してワクチンに使用することから、究極のオーダーメイドワクチンとされており、従来の樹状細胞療法よりも高い効果が期待できます。

ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンを使用した免疫療法の流れは以下の通りです。

  1. 患者さんから、がん組織を採取する
  2. 次世代シーケンサーを用いてネオアンチゲン解析検査を実施し、ネオアンチゲンを特定する
  3. ネオアンチゲンペプチドを合成する
  4. 成分採血を行い、樹状細胞を採取する
  5. ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンを製造・投与する

なお、ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンを用いた治療にはいくつかの条件が必要になります。詳しくは瀬田クリニック東京までお問い合わせください。

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がん免疫療法には受動免疫と能動免疫の2種類がある

手術療法、薬物療法、放射線治療に加わる第四のがん療法として注目を集めているがん免疫療法には、受動免疫と能動免疫の2種類があります。

能動免疫はワクチンを投与して特定の病原体に対する免疫を獲得・強化する方法です。例としては、樹状細胞療法やサイトカイン療法などが挙げられます。一方の受動免疫は、特定の病原体に対する抗体を作り、患者さんに投与して免疫を高める方法のことです。こちらは、CTL療法やNK療法などが例として挙げられます。

どの療法を採用するかは、患者さんの状態や医療機関の方針などによって異なるので、担当医師とよく相談して決めることが大切です。

瀬田クリニック東京では、患者さん一人ひとりに合わせた個別化医療に対応しています。事前に実施した検査結果や、患者さんの現在の状況を加味した上で、個人にとって最良の治療法を提案いたします。

がんの免疫療法や個別化医療に興味のある方は、ぜひ瀬田クリニック東京までご相談ください。

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