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免疫と抗体の違いは?がん細胞だけを攻撃する免疫療法のメリットも解説

投稿日:2024年11月15日

更新日:2024年11月15日

免疫と抗体の違いは、免疫が病原体に対する防御機能全体を指し、抗体が特定の病原体を排除する物質を指す点です。元気で健康的な日常を送るためにも、まずは免疫機能の仕組みを理解しておきましょう。最近では、免疫の力を利用するがん治療の免疫療法も注目されています。

本記事では、免疫と抗体の仕組みや違い、免疫力を高める免疫療法のメリットや治療の仕組みを解説します。

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免疫と抗体の仕組みとは?

私たちの日常生活には、目には見えない病原体が常に潜んでいます。正常細胞とは異なる感染細胞が体の中で発見されたときに重要な役割を果たすのが、免疫機能です。

ここでは、免疫機能を構成している免疫と抗体の仕組みを解説します。

1. 免疫の仕組み

免疫とは、ウイルスや細菌などの病原体から身を守るために働く力のことです。ウイルスなどが体に入るのを防いだり、侵入時に攻撃して排除したりする役割を持っています(※)。

免疫を構成している主な要素は、以下の通りです。

  • 白血球:異物や病原体を識別し、攻撃する
  • リンパ球:白血球の一部でT細胞やB細胞、NK細胞などで構成されている
  • 樹状細胞:異物を捕捉し、リンパ球に情報を伝える

免疫は、大きく分けて自然免疫と獲得免疫に分かれます(※)。

自然免疫は、生まれながらに備わった機能で、細菌やウイルスなどを直接攻撃する免疫です。自然免疫には主に以下の細胞が関係しています。

  • 好酸球:寄生虫や細菌を処理する白血球の一種
  • 好中球:処理した細胞を消化し殺菌する白血球の一種
  • 好塩基球:好酸球や好中球の異動を助ける
  • マクロファージ:体内に入り込んだ異物を処理する
  • 樹状細胞:異物の侵入をT細胞に伝える
  • ナチュラルキラー細胞:ウイルスやがん細胞を処理する

これらの細胞が自己の細胞と異物を認識し、病原体が体に入り込んだ際には速やかに攻撃・排除しているのです。

獲得免疫は、自然免疫では倒しきれない病原体に対抗する免疫です。体に入ってきた病原体を記憶し、再び感染しないようにするための抗体を作る性質があります。がん細胞を攻撃するT細胞、脊髄で再感染から体を守る抗体を産生するB細胞などで構成されています。獲得免疫は自然免疫と違ってすぐには反応せず、1~2週間と時間をかけて抗体を仕上げる免疫です。

※参考:国立がん研究センター.「免疫療法 もっと詳しく」.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html,(参照 2024-09-05).

※参考:公益財団法人長寿科学振興財団.「健康長寿ネット」.
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/covid-19-taisaku/menekitohananika.html,(参照 2024-09-05).

2. 抗体の仕組み

抗体とは、獲得免疫のB細胞によって作られるY字のタンパク質です。Y字の上部両端が細菌やウイルスなどの病原体(抗原)と結びつき、感染を未然に防ぎます。具体的な役割は、結びついた病原体をマクロファージに取り込んでもらうことです。

抗体が病原体と結び付くと、マクロファージが病原体を取り込んで分解します。そして取り込まれた病原体の情報は、マクロファージからヘルパーT細胞(異物侵入の伝達を受ける細胞)に伝達されます。ヘルパーT細胞からB細胞に抗体を作るよう指令を出し、同じ病原体に再感染しないための抗体を作り始めるまでが、病原体に対する免疫を獲得する一連の流れです(※)。

抗体にも種類があり、主に以下の5つで構成されています。

  • IgG:血液や体液中にあり、病原体の中和や記憶の形成、新生児を守る働きをする
  • IgM:血液中にあり、感染初期に反応する
  • IgA:唾液や鼻汁、腸管などの分泌物中にあり、病原体の侵入を防ぐ働きをする
  • IgD:B細胞の表面にあり、呼吸器の感染予防などに効果的といわれている
  • IgE:肥満細胞と結合し、アレルゲンや寄生虫に対して反応する

抗体は病原体の識別や中和、排除の過程で効果的に作用し、体を感染から守る重要な要素となります。

※参考:公益財団法人長寿科学振興財団.「健康長寿ネット」.
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/covid-19-taisaku/menekitohananika.html,(参照 2024-09-05).

免疫と抗体はどのような役割がある?

免疫と抗体は、体の健康を多角的に支える役割を果たしています。以下でそれぞれの役割を見ていきましょう。

1. 免疫の役割

免疫の役割は以下の通りです。

  • 病原体の排除
  • 異物の識別
  • 抗体の産生
  • がん細胞の攻撃

主な役割は、前述で示した通り病原体の排除です。自然免疫と獲得免疫が協力し合いながら、ウイルスや細菌、がん細胞などを排除して体を守ります。

また新陳代謝の向上も重要です。低下した新陳代謝が上がれば、免疫機能が正常に機能し健康維持につながります。

獲得細胞を構成するB細胞は、病原体による感染を防ぐ抗体を作る細胞です。作られた抗体は病原体の中和や排除の作用だけでなく、再度同じ病原体が侵入した際の防御機能として働きます。

またT細胞は、異物として認識されたがん細胞を攻撃する役割があるため、がんの進行や転移を防ぐ働きがあります。

2. 抗体の役割

抗体の役割は、以下の4つです。

  • 病原体の中和と無害化
  • オプソニン化
  • 補体活性化
  • 感染した細胞の排除

体に病原体が入ると、抗体が持つ中和作用が働きます。中和作用とは、病原体の有毒な部分を隠し、毒素を無害化する作用です。抗体はY字の形をしていますが、そのY字の上部先端部分で悪質な病原体の周りを囲みます。取り囲むと病原体の有害な部分が隠され、無毒化される仕組みです。その結果、病原体と細胞が結び付けなくなり、感染力が弱まります。

またオプソニン化も抗体の重要な役割です。オプソニン化とは、免疫細胞が効率よく病原体を取り込めるようにする作用です。抗体と病原体が結ばれると、余計な病原体を食べてくれるマクロファージが「このウイルスは健康を害する細胞だ」と認識しやすくなります。オプソニン化は、病原体を素早く除去する手助けをするために必要な効果です。

抗体には、補体を活性化させる役割もあります。補体とは、抗体の働きを助けるタンパク質分解酵素の一種です。体内の病原体と抗体が結び付くと補体が活性化され、悪質な細胞の膜に穴を開けて細菌を破壊します。

さらに抗体がウイルスに感染した細胞に結び付くとNK細胞が作用し、感染細胞を排除するための酵素を放出します。

免疫と抗体は何が違う?

免疫と抗体は密接な関係にありますが、いくつか違いがあります。

免疫は、生活の中に潜んでいるウイルスやがん細胞などの病原体から防御するための体の仕組みのことです。

一方、抗体は体の中の病原体を直接的に取り除く物質のことです。抗体は獲得免疫から作り出されるため、免疫機能の一部になります。

感染症のワクチン接種を例にして、免疫と抗体の関係性を見てみましょう。

  1. ワクチンによって病原体が体内に投与される
  2. 免疫機能が働いて、病原体を攻撃する
  3. 病原体の一部を検知した樹状細胞が、ヘルパーT細胞に情報を伝える
  4. ヘルパーT細胞から指令を受けてB細胞が抗体を作る
  5. 作られた抗体によって免疫機能が強化される
  6. 再感染時にその抗体が素早く作用し、病原体から体を守る

免疫は上記の1~6までの仕組み全体を指しますが、抗体はステップの中の一要素として機能するイメージです。ワクチンを接種する理由の一つは、特定の病原体に抵抗できるよう抗体をあらかじめ作っておくためです。ワクチン接種に限らず、他の病原体でも同じ仕組みで免疫と抗体が作用します。

免疫機能が病原体を識別し、排除しようとする動きが始まることで抗体が産生され、さらに免疫機能が強化するといった密接な関係にあります。

免疫療法とはどのような治療方法?

がん治療法には、手術療法や抗がん剤治療、放射線治療がありますが、これらの中でも比較的新しい治療法なのが免疫療法です。

ここでは、免疫療法の仕組みや種類、メリットを解説します。

1. 免疫療法の仕組み

免疫療法とは、がん患者さんの免疫の力でがん細胞を攻撃する治療法です(※)。

免疫細胞の一部であるT細胞の役割は、体内に現れたがん細胞を攻撃して排除することです。しかし、T細胞の力が弱くなると、十分にがん細胞を排除できなくなります。免疫療法ではT細胞の働きを促進し、がん細胞に対する免疫反応を向上させることで、体内のがん細胞を攻撃、除去していきます。

科学的に証明されている免疫療法の方法は、以下の通りです。

  • T細胞の攻撃力を高める方法
  • T細胞の力が弱まらないよう攻撃力を維持する方法

上記の方法の仕組みを車のアクセルに例えると、T細胞の攻撃力を高めるのは、アクセルを踏み込んでスピードを上げることを指します。一方、T細胞の攻撃力を維持するのは、アクセルを一定に保ってスピードを落とさないようにする操作に相当します。

このように、免疫療法は患者さんの体質やがんの進行具合に合わせて、T細胞の働きをコントロールしながらがん細胞を排除する治療法です。

※参考:国立がん研究センター.「免疫療法 もっと詳しく」.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html,(参照 2024-09-05).

2. 免疫療法の種類

免疫療法では、以下の方法でがん細胞を攻撃していきます(※)。

免疫療法の種類 特徴
免疫チェックポイント阻害剤
  • T細胞のがん細胞に対する攻撃力を維持する薬剤を使用する治療法
  • T細胞にブレーキが掛かる仕組みを意味する「免疫チェックポイント」を阻止する作用を持つ
  • 単体で使用する場合と他の薬剤や抗がん薬と組み合わせて使用する場合がある
免疫細胞治療
  • T細胞のがん細胞に対する攻撃力を維持する薬剤を使用する治療法
  • エフェクターT細胞療法、CAR-T細胞療法とも呼ばれる
  • CAR-T細胞療法は、血液やリンパのがん治療で活用されている
がんワクチン
  • ワクチンを通して抗原(病原体)を体内に投与し、免疫機能を高めてがん細胞への攻撃力を強める治療法
  • がんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチンが該当する
抗体医薬
  • がん細胞の表面にある特定の分子に結合する抗体を投与する治療法
  • トラフツズマブやセツキシマブ、ペルツズマブなどの薬剤が抗体医薬品として使用されている
サイトカイン療法
  • 免疫細胞が情報を伝達するための物質「サイトカイン」を人工的に合成し、体内に投与してがん細胞を攻撃する治療法
  • インターフェロン(α、β、γ)やインターロイキン2などのサイトカインが、現在腎臓がんなどの治療で使用されている
免疫賦活剤
  • 免疫機能を活性化させる物質を投与し、がん細胞の攻撃力を高める治療法
  • クレスチン®、レンチナン®、ソニフィラン®などが医薬品として認められていたが、具体的な作用が曖昧だったため、次第に衰退した
  • 現代では膀胱炎治療のBCGなどで使用されている

免疫療法には、科学的な根拠によって国から認められている治療法と、まだ研究段階で十分な証拠が得られていない治療法もあります。根拠が得られていない場合は自由診療になるため、保険適用外の自費治療となります。

病院によって治療法や費用が異なるため、事前に医師と相談しましょう。

※参考:国立がん研究センター.「免疫療法 もっと詳しく」.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html,(参照 2024-09-05).

3. 免疫療法のメリット

免疫療法のメリットは、全身に転移したがんにも適応できる点です。手術や放射線治療は特定の場所のがんに限定した治療法ですが、免疫療法は場所や進行度を問わず治療を進められます。さらに、免疫治療は効果が現れるまでに時間が掛かるものの、一度現れればその後は持続的に効果を感じやすいとされています。

また、正常な細胞を傷付けずにがん細胞のみを狙い撃つ治療法のため、副作用が少ない点もメリットです。抗がん剤治療や手術療法などは、がん細胞の周りの正常細胞にダメージを与えるため、副作用が強く出る場合があります。免疫治療なら、体への負担を軽減しながら治療が可能です。

ただし、副作用がまったく出ないとは限りません。患者さんの体質によっては、軽度の発熱や発疹等が見られる場合があります。何か異変を感じたらすぐに医師に相談しましょう。(※)

瀬田クリニック東京でも、患者さんの体に合わせたオーダーメイドの免疫細胞治療を行っています。患者さんの免疫の力を使ってがん治療をしていくため、体への負担が少ないがん治療が可能です。

免疫細胞治療について詳しくはこちら

※参考:国立がん研究センター.「免疫療法 もっと詳しく」.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html,(参照 2024-09-05).

免疫と抗体の違いを理解して、がん治療を進めよう

免疫は体内の病原体を排除する仕組みを指し、抗体は病原体を排除するために作られる物質を指します。これらの免疫機能が相互作用し合ってこそ、体はより効果的に病原体と戦えます。

免疫療法はがん患者さんの免疫本来の力を活用しながら、病原体を排除する細胞の力を強めたり、弱まらないよう力を維持したりする治療法です。正常細胞にはダメージを与えずがん細胞だけを狙い撃つ治療のため、副作用が少なく長期間効果を感じやすいメリットがあるため、体へのダメージに配慮してがん治療を進めたい患者さんは、ぜひ免疫療法をご検討ください。

瀬田クリニック東京では、患者さん一人ひとりに合わせた治療プランの下、体への負担を軽減できる免疫細胞治療を行っています。初期がんの患者さんはもちろん、進行がんや再発がんの患者さんも受診可能です。治療の種類によって異なりますが、場所や進行度問わずほとんどのがん種に適応できるため「体に優しく、なおかつ生活の質も維持できる治療を行いたい」とお考えの患者さんは、ぜひお気軽にご相談ください。

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