子宮頸がんは子宮頸がん検診を受けた場合や、何らかの異変があって病院を受診したことで発覚につながることが多いです。初期症状がほとんどないがんの一つですが、どのようなきっかけでがんが発覚するのでしょうか。
本記事では子宮頸がんの基礎知識やがんが発覚するきっかけ、ステージごとの状況や治療法などを解説します。子宮頸がんを含めてがんは早期発見が大切です。子宮頸がんは性交渉の経験が一度でもあれば、誰でも発症する可能性があります。本記事を参考にして、子宮頸がんへの理解を深めましょう。
子宮頸がんの基本的な知識
子宮頸がんとは子宮の入り口である子宮頸部(しきゅうけいぶ)にできるがんのことです。成人女性の子宮はニワトリの卵程度の大きさといわれており、この子宮頸部と、袋状の子宮体部(しきゅうたいぶ)に分かれています。
子宮頸がんは主にHPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスへの感染が原因です。性交渉のパートナーの数に比例して、HPVへの感染リスクが高くなるとされていますが、一度でも性交渉の経験がある女性なら誰でも感染するリスクがあります。ただしHPVに感染したとしても、9割程度は自然にウイルスが排出されるため、必ずしも子宮頸がんになるとは限りません(※)。子宮頸がんになるのは子宮を持つ女性だけですが、男性もHPVには感染します。
子宮頸がんやがんの前段階である上皮内がんを発症する年齢のピークは、女性の出産年齢と重なるといわれています。近年日本で子宮頸がんの発症ピークは、30代後半です(※)。毎年約1万1,000人の女性が子宮頸がんを発症し、約2,900人が亡くなっています。また年間約1,000人が、30歳代までにがんの治療によって子宮を摘出しています(※)。
※参考:MSD製薬. 「子宮頸がんQ&A」.https://www.shikyukeigan-yobo.jp/qa/,(参照 2024-06-29).
※参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会. 「子宮頸がん」.https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/,(参照 2018-06-16).
※参考:厚生労働省. 「HPVワクチンについて知ってください」.https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901220.pdf,(参照 2024-06-29).
子宮頸がんの発覚の主なきっかけを解説
子宮頸がんが発覚する主なきっかけには、どのようなものがあるのでしょうか。子宮頸がんが発覚する代表的な6つのきっかけを見ていきましょう。
1. 検診・健診
子宮頸がんが発覚する主なきっかけは検診や健診です。
検診とは病気の早期発見を行うために受けるもので、健診はご自身の健康状態を確認するために受けるものです。広義では妊婦や胎児の健康診断となる妊婦健診も健診に含まれます。
早期発見のために子宮がん検診を受けた際や妊婦健診を受けた際に異変や異常が見つかり、子宮頸がんが発覚する方は多いです。子宮頸がんは初期症状がほとんどないので、早期発見のためには定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。検診では次のような検査が実施されます。
- 細胞診
- 組織診
- コルポスコープ
- 超音波(エコー)検査
(1)細胞診
細胞診とは細胞診検査の略です。子宮の入り口付近を綿棒やブラシなどでこすり、細胞を採取します。採取した細胞を観察することで、細胞が良性であるか、悪性であるかを判断します。
(2)組織診
細胞診で異常があった場合に実施されるのが組織診(組織診検査)です。組織診では病変の一部の組織片から状態を確認します。組織診では構造の異常も調べることが可能です。そのため、細胞診よりも診断率が高いのが特徴です。
(3)コルポスコープ
コルポスコープは子宮頸がんが疑われる場所を拡大する拡大鏡です。コルポスコープによって異常が疑われる部位を拡大した後、組織を採取して検査につなげます。
(4)超音波(エコー)検査
超音波(エコー)検査では超音波(エコー)を出す器具を体に当てて、跳ね返ってきた超音波を画像として映し出します。超音波(エコー)検査では他の部位やリンパ節に移転していないかを調べることも可能です。
2. 不正出血
不正出血が起きたことで、子宮頸がんが発覚するケースも少なくありません。
子宮頸がんを発症した初期には出血がみられることはほぼありませんが、進行すると月経とは異なるタイミングで不正出血が起きることがあります。また性交渉時に不正出血が起きるケースも多いです。
不正出血は子宮頸がん以外の理由で起きることもありますが、継続して不正出血が続く場合は、病院を受診しましょう。
3. 分泌物の異常
分泌物の異常によって、子宮頸がんが発覚するケースもあります。
この場合の代表的な分泌物とはおりもののことです。子宮頸がんが進行すると、おりものの量が増えたり、通常のおりものとは異なるおりものが出たりすることがあります。具体的には茶色のおりものや粘度のあるおりもの、水っぽいおりもの、膿のようなおりものなどです。
通常とは異なるおりものが続いている場合、一度病院を受診することをおすすめします。
4. 下腹部痛・腰痛
下腹部痛や腰痛を感じるようになったことで、子宮頸がんが発覚するケースもあります。
子宮頸がんが進行すると、下腹部や腰に痛みを感じるようになることがあります。また性交渉時に痛みを感じる方も多いです。
これらの痛みは子宮頸がん以外の原因のこともありますが、これまでには感じない痛みを感じたら、一度病院を受診することが大切です。
5. 尿の異常
尿の異常によって、子宮頸がんが発覚するケースもあります。
子宮頸がんが進行すると、不正出血やおりものだけでなく尿にも異常がみられることがあります。具体的には頻尿や血が混ざった尿、排尿時の痛みなどです。
これらの場合も子宮頸がん以外が原因の可能性がありますが、何らかの病気が潜んでいる可能性が高いので、病院を受診することをおすすめします。
6. 鼠径部の腫れ
鼠径部の腫れも子宮頸がんが発覚するきっかけの一つです。
子宮頸がんが進行すると、子宮から近い鼠径部(太ももの付け根の内側)に腫れが出ることがあります。鼠径部に腫れがみられる場合、リンパ節に腫瘍が広がっている恐れがあり、子宮頸がんがさらに進行している可能性が高いです。
鼠径部に腫れがみられる場合以外にも、むくみや痛みを感じる場合は、病院を受診してください。
子宮頸がんのステージ
子宮頸がんを含めて、がんの進行度合いはステージで分類されます。
ステージはⅠ〜Ⅳ期に分類されます。初期段階はⅠ期で、数字が大きくなるにつれてがんが進行しているということです。
ステージごとの状態は以下の通りです(※)。
- Ⅰ期:がんが子宮頸部にとどまっている
- Ⅱ期:がんが子宮頸部を超えて広がっているが、膣壁の下1/3以内もしくは骨盤壁には達していない
- Ⅲ期:がんが膣壁下1/3に広がり、ならびに・あるいは骨盤壁に達している、ならびに・あるいは水腎症や無機能腎の原因となっている、ならびに・あるいは骨盤リンパ節ならびに・あるいは傍大動脈リンパ節への転移がみられる
- Ⅳ期:がんが膀胱もしくは直腸の粘膜に広がっており、小骨盤腔(恥骨と仙骨の間)を超えて広がっている
一般的にがんは診断されてからの5年がポイントになります。がん治療時に見つからなかったがんが見つかるのは5年以内のことが多く、5年間再発が見られなければ再発の可能性が低いと考えられているからです。
※参考:がん情報サービス. 「子宮頸がん 治療」.https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/treatment.html,(参照 2024-06-29).
早期発見の重要性とその後の対応
子宮頸がんを早期に発見すれば、選択できる治療法もそれだけ多くなります。
前述した通り子宮頸がんは初期症状がほとんどないため、検診や健診を受ける機会がなければ、気付かないうちに進行してしまう可能性があります。発覚したときにかなり進行しているケースも少なくありませんから、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
早期に子宮頸がんを発見できると、体に残る傷を小さくとどめられる可能性も高いです。進行した状態では開腹での手術が必要になるケースも多いですが、早期発見の場合は開腹を行わなくても治療できる可能性があるため、体への負担を軽減でき、術後の回復も比較的早く済みます。がんにならないことに越したことはありませんが、早期発見することで負担を軽減しながら治癒を目指せるでしょう。
また定期的に子宮がん検診を受けることで、子宮頸がんの前段階の発見にもつながります。HPVに感染後の子宮頸がんの発症までの期間は、以下の3つです。
- CIN1:軽度異形成
- CIN2:中等度異形成
- CIN3:高度異形成・上皮内がん
CIN1やCIN2の段階はすぐに治療は必要がありませんが、定期的に検査を受けて経過を見ます。CIN3の高度異形成・上皮内がんは治療が必要ですが、この段階であれば円錐切除術やレーザー蒸散術と行った方法での治療が可能です。
子宮頸がんが進行すると、多くの場合、子宮を取り除かなければなりません。妊娠を望んでいるのに子宮を摘出しなければならず、大きなショックを受けてしまう方も少なくありませんが、CIN3の段階なら子宮を温存したまま治療を進めることも可能です。子宮を残す治療ができれば、治療後に妊娠できる可能性もあります。
子宮頸がんの主な治療法
子宮頸がんの主な治療法は以下の4つです。
- 手術療法
- 放射線治療
- 薬物療法
- 免疫療法
患者さんの希望やがんのステージ、がんがある部位、ライフスタイル、健康状態、合併症の有無などによって適した治療が変わってきます。場合によっては複数の治療法を組み合わせるケースも多いです。
しかし全ての子宮頸がん患者さんがどの治療でも受けられるわけではないので、ステージによっては希望する治療を受けられないかもしれません。できるだけご自身のご希望に合わせて適切な治療を受けたいなら、選択肢が多い初期段階でがんを発見することが大切です。
それぞれの治療法について見ていきましょう。
1. 手術療法
子宮頸がんの代表的な治療法の一つは、がんの標準治療の一つである手術療法です。手術療法はがんに広がりや転移がみられない際に選択されることが多く、子宮頸がんの前段階であるCIN3の治療やステージⅠ・Ⅱの治療に用いられます。
CIN3やステージⅠのかなり初期であれば、病変がある部分を円錐状に切り取る「円錐切除術」で、子宮を温存したまま治療をすることが可能です。円錐切除術で子宮を残しても妊娠や出産に影響が出る恐れはありますが、妊娠できる可能性はゼロにはなりません。
円錐切除術を受けて切除面にCIN3があった場合や、上皮内腺がんやごく初期のステージⅠは子宮のみを切除する「単純子宮全摘出術」が行われます。開腹手術の他、場合によっては傷跡が小さく済む腹腔鏡下手術や、お腹を切らずに膣側から切除を行う腟式手術も可能です。単純子宮全摘出術を受けると妊娠はできなくなりますが、性交渉は問題ありません。
子宮に加え、周辺組織の一部や膣の一部も切除するのが「準広汎子宮全摘出術」です。単純子宮全摘出術よりも大幅な切除を行いますが、膀胱の神経の多くは残すことができるため、術後の排尿トラブルを抑えられます。妊娠はできなくなりますが、性交渉は可能です。
子宮と一緒に子宮周辺の組織や膣を切除するのが「広汎子宮全摘出術」です。卵巣を切除するかどうかは、年齢やステージなどによって異なります。準広汎子宮全摘出術よりもさらに大幅な切除を行うので、がんを取り切れる可能性が高いです。しかしリンパ浮腫や排尿トラブルが起きる可能性や、性交渉への影響が出る恐れがあります。
「広汎子宮頸部摘出術」は、本来なら広汎子宮全摘出術が必要なものの、妊娠が可能な年齢の患者さんに対して検討される手術療法です。子宮体部と卵巣を残して治療を行うことで、術後の妊娠の可能性を残すことができます。開腹手術もしくは膣式手術のいずれかで行われます。
2. 放射線治療
がんの標準治療である放射線治療も、子宮頸がんの治療に用いられる方法です。
がんに放射線を照射することで細胞の遺伝子にダメージを与え、がんの治癒を目指します。子宮頸がんの場合、主に以下の放射線治療が行われます。
- 外部照射:骨盤の外から放射線を照射する
- 膣内照射:膣内や子宮内に器具を入れ、直接病変部に照射する
- 組織内照射:がん組織や周辺組織に放射線を出す物質を挿入する
放射線治療は子宮頸がんのほとんどのステージに対応できるとされています。また通院で受けられることが多く、体への負担を抑えられるのが特徴です。放射線治療を受けると卵巣の機能はほぼ消失してしまいますが、手術療法に比べると排尿トラブルのリスクや性交渉への影響も軽減できるとされています。
ただし治療から数週間以内に倦怠感や吐き気、下痢、粘膜・直腸・膀胱などの炎症が起きる急性反応が出る可能性があります。治療から数カ月から数年後に、消化管や尿路、膣などに合併症が出る晩期合併症が起きるかもしれません。
3. 薬物療法
薬物療法もがんの標準治療の一つで、子宮頸がんの治療法の一つです。
抗がん剤を用いることにより、がん細胞を破壊したり増殖を抑えたりする薬物療法は転移がみられる進行がんや、がんを再発したケースなどに用いられます。飲み薬の服用や、注射・点滴など、さまざまな投与方法があります。
子宮頸がんの薬物療法で用いられる代表的な薬物の一つが「細胞障害性抗がん剤」です。これはがん細胞の増殖のメカニズムを邪魔する薬物を投与することで、がん細胞の増殖を防ぐ薬で、放射線療法の効果を高めるために併用されるケースもあります。がん細胞だけでなく、健康な細胞の増殖も阻害してしまうことがデメリットです。
また子宮頸がんの薬物療法では「分子標的薬」が用いられることもあります。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関与するタンパク質をターゲットとして攻撃する薬です。子宮頸がんの治療においては、細胞障害性抗がん剤と併用されることもあります。
薬物療法はどのような薬物を投与するかによって副作用が変わってきます。細胞障害性抗がん剤の場合、吐き気・嘔吐・脱毛・白血球の減少・痺れ・痛みなどが代表的な副作用です。また分子標的薬の場合、消化管に穴が空いたり傷が治りにくくなったりする他、血栓や出血、高血圧、タンパク尿などの可能性があります。ただし同じ薬物でも副作用は体質による個人差が大きいです。
4. 免疫療法
子宮頸がんの治療では免疫療法が行われることもあります。
免疫療法とは人が元々持っている免疫力を応用した治療のことです。免疫とは外部から異物の侵入を防いだり侵入した異物を排出したりする自己治癒力の一つです。手術療法・放射線治療・薬物療法と異なり標準治療ではありませんが、標準治療と組み合わせることで高い効果が期待できるとされています。
全身に作用する治療法ですが、健康な細胞にも影響を与えてしまう薬物療法と異なり、がん細胞だけをターゲットにして治療できるため、比較的副作用が少ないとされています。効果が出るまでには一定の時間が必要ですが、一度効果が現れると長期的に効果が持続するケースが多いです。
免疫療法には以下のようなものがあります。
- 免疫チェックポイント阻害剤:がん細胞が免疫細胞からの攻撃をブロックする仕組みを解除する
- 免疫細胞治療:体内から取り出した免疫細胞を体外で増殖・活性化させて再び体内に戻しがんを攻撃する
- 抗体医薬:がん細胞の表面にある分子への抗体を利用した医薬品
- サイトカイン療法:がん免疫を高める効果を持つサイトカインを合成して投与する
- 免疫賦活剤:がん免疫向上に効果が期待できる薬剤
子宮頸がん治療は標準治療と免疫治療の併用の検討を
本記事では子宮頸がんの基礎知識や子宮頸がんが発覚するきっかけ、早期発見の重要性やステージごとの状況や治療法を解説しました。子宮頸がんを含めたがんは、早期発見・早期治療が大切です。子宮頸がんは初期症状がほとんどないため、定期的に検診を受けるようにし、万が一の場合はできるだけ早く治療を行うことが大切です。治療方法はさまざまなものがありますが、効果的に治療を行うには標準治療と免疫治療を併用することも検討してみると良いでしょう。
がん免疫細胞治療を専門としている瀬田クリニック東京では、個別化がん免疫療法を行っています。免疫力を応用して行う免疫療法は、治療を受ける方の体質やがんの状態に合わせて行うことが大切です。患者さんの免疫機能やがん細胞の免疫的特性を診断して、複数の免疫療法の中から、個別にもっとも適切なものを選択する個別化医療を行っています。さらには、患者さんお一人おひとりのがん細胞の遺伝子変異を突き止めた上で、効果が期待できる治療も実施できます。がん治療の選択肢を増やしたいと考えている方は、お気軽に瀬田クリニック東京へご相談ください。