がんを患うと多くの患者さんが痛みを経験します。痛みは、がん自体により引き起こされるものだけではなく、治療の副作用や精神的なストレスなど、さまざまな原因があります。そのため、痛みの原因を特定し、患者さんの状態に応じた適切な治療を行うことが大切です。
本記事では、がんの痛みはなぜ起こるのか、症状や痛みの評価方法、治療法や自分でできる緩和法を紹介します。
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がんによる痛みの種類と原因
がん患者さんが経験する痛みを「がん疼痛(とうつう)」いい、診断時点で2~5割、進行時には7~8割の患者さんが何らかの痛みがあるとされています(※)。がんの痛みといっても、がん自体によるものもあれば治療由来のものなど、以下のようにさまざまな種類があるため、原因に応じた対処が必要です。
- ●がん自体が原因の痛み
- ●がんの治療に伴う痛み
- ●がんに関係のある痛み
- ●がんのストレスによる痛み
※参考:厚生労働省医療・生活衛生局.「医療用麻薬適正使用ガイダンス」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017b.pdf ,(参照 2025-03-17).
がん自体が原因の痛み
がんが進行すると、がん細胞が増加し大きな腫瘍となったり、周囲の臓器や組織に広がる「浸潤(しんじゅん)」を起こしたりします。また血管やリンパ節にがん細胞が入り込むと、別の臓器でがんが発生する「転移」が起きることがあります。がん自体が原因の痛みでは、肉体や神経への直接的な影響により、がんの種類に応じてさまざまな痛みが生じる点が特徴です。
がんの治療に伴う痛み
手術療法や化学療法、放射線療法などのがんの治療が原因で起こる痛みがあります。
手術により起こる痛みを「術後疼痛」といい、皮膚や神経などの損傷が原因です。通常は、手術から数日で痛みがなくなる「術後急性痛」が多いものの、中には3カ月程度経過後も痛みが残ったり、再発したりする「術後慢性痛」を経験する患者さんもいます。
化学療法では、抗がん剤など使用する薬剤の副作用が原因でさまざまな痛みが生じることがあります。痛みの種類や痛みが出る部分は、薬剤や患者さんの体質、病状によってさまざまです。
放射線療法では、放射線を照射する部位に応じた副作用が発生するケースがあります。副作用には照射後数週間で生じる「急性期反応」と、数カ月から数年後に生じる「晩期反応」がある点が特徴です。急性期反応では嚥下時の痛み、晩期反応では腸閉塞などの症状により痛みが生じることがあります。
がんに関係のある痛み
がんの治療中は怠さや痛みが原因で、身体活動が低下しやすいです。長期間寝たきりの状態が続くと、筋力や血流の低下により、むくみや腰痛、床ずれになり、痛みを生じることがあります。
またがん治療が長引くと、関節炎や風邪、頭痛など、がん以外の病気を発症することもあります。別の病気が原因の痛みと、がんが原因の痛みは見分けにくい場合もあるため、気になる症状があれば自己判断せず医師に相談しましょう。
がんのストレスによる痛み
がん患者さんの多くは、がんの病状や、自身の健康、今後の仕事や生活、家族のことなど、さまざまな悩みや不安を抱えています。これらの精神的苦痛は「心因性疼痛」と呼ばれるものです。
また治療の長期化によって脳が痛みを覚えてしまった場合、物理的な原因が消失したにもかかわらず痛みを感じ続けるケースもあります。
がんの痛みの症状
がん自体が原因の痛みは、以下の3つに分類されます。
がんの痛みの分類 | 特徴 |
---|---|
体性痛 | 皮膚の下の痛み(表在疼痛)と、関節や筋肉の痛み(深部痛)に分かれます。がんが体の組織を刺激し生じ、体を動かすと痛みが増すことがあります。痛む場所が分かりやすく、ズキズキ・ヒリヒリ・ジンジンするような痛みです。 |
内臓痛 | 内臓由来の痛みで、がんが周囲を圧迫したり、浸潤したりして生じます。痛む場所がはっきりとしておらず、腸の蠕動(ぜんどう)運動のような収縮性の痛みや、鈍痛、押されたり絞られたりするような痛みが特徴です。また、重い痛みと表現されることもあります。 |
神経障害性疼痛 | 神経の圧迫や損傷により起こる痛みで、がんが神経に浸潤するなどして生じます。ピリピリ感や灼熱感がある、感覚が過敏になり軽い刺激でも痛みを感じる、温度に敏感になる、しびれを伴うなどが特徴です。深くうずくような痛みと表現されることもあり、難治性の症状も多いです。 |
がんの痛みの評価方法
がんの痛みは数値化できないため、患者さんが状態を言葉で表し、伝えることが特に重要です。以下の評価方法から痛みの状態を日々記録すると、がんの痛みを具体的に伝えやすくなります。
- ●痛みのある部分や範囲
- ●痛みの種類
- ●これまでの経過
- ●痛みの強さ
- ●痛みの持続性
- ●痛みの辛さ・日常生活への影響の程度
- ●痛みが増すとき・和らぐとき
痛みのある部分や範囲
痛みのある部分や範囲が分かると、痛みの原因特定や適切な薬剤の選択につながります。例えば、右足や胃など特定の部位が痛いのか、それとも脇腹から腰にかけてなど広範囲で痛むのかを記録しましょう。痛みのある部分が複数に及ぶときは、それぞれ記録します。
痛みの種類
痛みの種類が分かれば適切な治療をしやすいため、どのように痛いのかを言葉で表しましょう。
例えば、体性痛は鋭い痛み、内臓痛は締め付けられるような重い痛みが特徴です。神経障害性疼痛はしびれるような痛みを感じます。具体的に表現しにくいときは「ズキズキ」「ウズウズ」「ズーン」などのオノマトペを使うのも有効です。
これまでの経過
痛みがいつから生じているか分かると、がん由来の痛みか、別の病気が原因かを特定しやすくなります。例えば、今朝起きたときから痛い、食後30分してから痛みが出たなどです。その痛みがいつまで続いていたかも合わせて記録しましょう。長引く痛みも発生時から現在の状態を記録すると分かりやすくなります。
痛みの強さ
痛みの強さの記録は、治療に効果があるのかを検証する上で有効です。痛みは主観的な感覚のため「痛みの評価スケール」という尺度を使うことが多く、11段階評価を使うNRSや、現在の痛みに合う表情を選ぶフェイススケールなどがあります。
簡易的な方法では、痛みを「なし」「軽度」「中程度」「強度」「最悪」の5つに分類し記録する方法があります。
痛みの持続性
痛みが出現するパターンが分かると、薬の投与量や投与間隔の把握に役立ちます。がんの痛みは1日12時間以上続く「持続痛」と、一時的に強い痛みが出る「突出痛」に分かれるため、まずはどちらに該当するか記録しましょう。
また突出痛のときは、痛みがどのようなときに出現しいつまで続くかも記録します。例えば、体を動かしたときだけ痛む、朝起きた直後から1時間程度痛むなどです。
痛みの辛さ・日常生活への影響の程度
痛みがどの程度つらいかを記録します。また日常生活に支障が出ているときは、具体的にどのような問題があるか記録しましょう。特に、痛みで眠れないときは、我慢せず医師に伝えることが大切です。食事・運動・排泄など基本的な行動も痛みで制限されると、生活の質の低下につながるため、具体的に記録しましょう。
痛みが増すとき・和らぐとき
痛みが増すとき(増悪因子)と和らぐとき(軽快因子)が分かれば、痛みをケアできる日常生活を組み立てやすくなります。例えば、痛みの増悪因子と軽快因子には以下があります。
- ●痛みの増悪因子:
体を動かしたとき、仕事中、食事、排泄、早朝、夜間、不安時、薬の服用前など - ●痛みの軽快因子:
体を温めたとき、患部を冷やしたとき、安静時、運動時、就寝時など
小さな変化も記録しておくと、改善方法の発見につながります。
がんの痛みの診断方法
がんの痛みの診断では、状況により以下のいくつかの検査を行います。
- ●問診
- ●身体診察
- ●画像検査
問診は診断の中でもメインとなり、「がんの痛みの評価方法」でも解説したように具体的な症状や状態を確認します。身体診察は、実際に痛みのある部分に触れ、押して痛みは出るか、まひなどの感覚はないかなどの検査です。画像検査では、CT画像やMRI画像などを確認し痛みの原因を探ります。
以上のように、いくつかの検査を行い、痛みの原因を総合的に判断します。
がんの痛みに対する治療法
がんの痛みに対する治療法では、以下のように段階を踏み、徐々に日常生活を取り戻せるようにするのが一般的です。
- 夜、しっかり眠れるようにする
- 日中、安静にしているときの痛みが消失する
- 体を動かしても痛みを感じない
患者さんが許容できる生活の質を維持できるよう、痛みを軽減するのが目標です。また、痛みの治療は薬物療法が一般的で、状況に応じ放射線治療や心のケアなども取り入れ、がん治療と合わせて行います。
薬物療法
薬物療法の基本は飲み薬の服用です。時間や期間を決めて規則正しく、患者さんの状態にあった量の薬を投与し、飲み薬の使用が難しいときは、注射剤や座薬、貼付剤を使うこともあります。
使用する薬は、非オピオイド系鎮痛薬やオピオイド鎮痛薬、鎮痛補助薬、医療用麻薬などがあり、痛みの強さに応じて使い分けます。薬は状況に応じ段階的に切り替え、弱いものから強いものに切り替えるのが一般的です。
薬物療法では、鎮痛薬を処方して終わりではなく、服用量や副作用の確認など、患者さんの状態に合わせて調整しながら治療を進めていきます。
放射線治療
がんの痛みに対する放射線治療を「緩和的放射線治療」といい、がん細胞やがん細胞の影響を受ける細胞を直接攻撃し、痛みの緩和を図ります。骨転移や神経障害性疼痛の治療に選択されることが多いです。
神経ブロック
神経ブロックとは、痛みのある部分の末梢神経の機能を停止させ、一時的な痛みから長期にわたる痛みまで軽減する方法です。末梢神経やその周囲に局所麻酔薬や高周波熱凝固などを行います。薬物療法を受けるのが難しい患者さんにも有効な方法です。
心のケア
がんの痛みは、精神的なストレスにより悪化していることもあります。心のケアとしては、精神科や心療内科の医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの専門家によるカウンセリングなどが行われるのが一般的です。心と体、双方のつらさを和らげる緩和ケアを行うこともあります。
がん治療法の変更
抗がん剤のように治療方法が原因で重篤な副作用が生じているときは、薬の種類や使用量を変更するケースもあります。
なお、がんの治療方法の中には、自身の免疫が持つ機能を応用する「免疫療法」のように、副作用が少ないものも存在します。副作用が原因で重度の痛みが生じているなら、治療方法自体の見直しも手段の一つです。
日常生活での痛み管理の工夫
がんの痛みは日常生活の工夫によっても、予防したり、軽減したりできます。実践するときは事前に医師に相談した上で、快適に過ごせる方法を増やしましょう。いくつか具体例を紹介します。
患部を温める、または冷やす
患部を温めると血行が促され、痛みが和らぐことがあります。また、炎症性の痛みでは、冷やすことで患部の熱を取り除き痛みが和らぐ可能性があります。どちらを行えば良いか分からないときは、医師に相談しましょう。
マッサージをする
体に痛みがあると、その部分をかばうことで周囲の筋肉が緊張し、別の痛みが生じやすいです。そのため、周囲をマッサージすると心地良さから痛みが軽減することがあります。
ただし、痛みのある場所はマッサージにより悪化する恐れがあるため注意しましょう。
気分転換をする
気分転換は心のケアにとっても重要です。ストレッチをする、散歩をする、音楽を聴く、人と会話するなど、一瞬でもがんのことを忘れ心地よく過ごせる方法を見つけましょう。
補助器具を使う
体を動かすと痛みが出たり、痛みにより思うように動けなかったりするときは、杖や歩行器のような補助具を使うのも有効です。
介護用品や福祉用品は、レンタルで利用できることも多いため、いくつか試してみて体に合うものを選ぶと良いでしょう。
まとめ
がんの痛みは、がん自体により生じるものだけではなく、治療の副作用や精神的なストレスなど、さまざまなものがあります。またがん治療の中には抗がん剤のように副作用が強いものもあるため、体への影響の少ない治療方法を検討するのも方法です。
瀬田クリニック東京では、患者さん自身の免疫細胞を利用しがんを治療する「免疫細胞治療」を行っています。他の治療方法と組み合わせられ、副作用が少ない点がメリットです。がんの治療方法でお悩みの方は、ぜひご相談ください。


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