がん患者さんにとって食事は、生命の維持や体力の回復につながる重要な要素です。治療中は通常以上にエネルギーを必要とするため、体調や症状に合わせた適切な食事管理をする必要があります。
本記事では、がん患者さんの基本的な食事や体調が優れないときの食事、注意すべきポイントを解説します。
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がん患者さんの体と食事の関係
食事は人が生きていく上で必要不可欠であり、体を動かすためのエネルギーとなります。
がん患者さんは特に適切な食事管理が重要です。がんそのものや治療の影響により、体はより多くの栄養を必要とする状態にあるためです。必要な栄養素を食事で十分に摂取することで、治療でダメージを受けた組織の再生や、生理機能の向上が期待できます。また食事ができたことに対する自信や安心感が生まれ、今後の治療への意欲や前向きな気持ちを高める助けとなるでしょう。
しかし、全ての患者さんが純粋に食事を楽しめるわけではありません。患者さんによっては食欲低下や吐き気などの副作用が出るのが現状です。治療中は可能な限り必要な栄養を摂取することが重要のため、個々の状況に応じて適切な食事管理を行う必要があります。
※参考:国立がん研究センター東病院.「がんと食事」.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/meal/index.html,(参照 2024-08-27).
がん患者さんの基本的な食事とは?
がん患者さんの基本的な食事は、そのときの体調や症状に合わせて調整が必要です。体調が良いときは主食、主菜、副菜がそろった食事を心掛けましょう(※)。
主食は体のエネルギー源になる食べ物、主菜は体をつくるために必要なタンパク質の供給源になる食べ物、副菜は体の調子を整えるミネラルの供給源になる食べ物です。
それぞれの代表的な食材は、以下の通りです。
- 主食:ごはん・パン・麺類など
- 主菜:肉・魚・大豆・卵など
- 副菜:野菜・きのこ・海藻類など
主食1杯、主菜1~2品、副菜2~3品を1日3食のペースで摂取できると良いです。また、一日のお好きな時間に乳製品や果物も取り入れてみましょう。
がん治療では筋肉量が低下したり、体力が落ちたりする場合があります。治療中でも栄養バランスの取れた食事を心掛けるのが大切です。
とはいえ、体調が悪いときは無理をせず、医師と相談しながらご自分のペースで食事を摂りましょう。
※参考:国立がん研究センター東病院.「がんと食事」.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/meal/index.html,(参照 2024-08-27).
術後の食事はどうする?
基本的には前述で紹介した主食、主菜、副菜がそろった栄養バランスの取れた食事を心掛けますが、術後は消化の状態や体力に応じて、食事の仕方やメニューを調整する必要があります。
ここでは、以下の4つのケースで術後の食事を見ていきましょう。
(1)胃や食道の手術後の食事
胃や食道の手術後は胃の機能が低下している状態のため、負担をかけないよう1日5~6回に分けて食事を摂りましょう。食事のポイントは以下の通りです(※)。
- 食べ物は細かく切り、30分以上かけて一口ずつよく噛んで食べる
- 食事後すぐに横にならない(逆流を防ぐため)
- 神経質にならずに、食べたいものを食べる
最初は食べられる量も少ないですが、3カ月ほどたてば徐々に量が増えていきます。体重が減少しなくなったら、1日3回の食事ペースに戻していきましょう。
食べてはいけないものは基本的にはありませんが、きのこやこんにゃくなどの食物繊維が豊富な食品、ジャンクフードなどの油が多い食品、麺類などの消化に悪い食品は少しずつ増やすイメージです。
水分を小まめに摂りながら、消化とのどごしの良いものをゆっくり食べるようにしましょう。
※参考:公益財団法人がん研究会 有明病院.「がん治療と食事」.
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/meal/index.html,(参照 2024-06-03).
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.”食道がん 療養”.
https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/follow_up.html,(参照 2024-09-05).
(2)大腸切除後の食事
大腸切除後1カ月間は、食物繊維の少ない食事を心掛けましょう。食物繊維を多く摂り過ぎると、術後で弱まっている腸にさらに負荷をかけて便秘や下痢を起こす可能性があります。
腸が正常に機能するまでは、以下のポイントに沿って食事を摂りましょう(※)。
- よく噛んで、時間をかけて食べる
- 下痢のときは十分な水分補給を行う
- 便秘のときは水分の摂取だけでなく、適度な運動を取り入れる
- きのこ、こんにゃく、海藻、ごぼう、たけのこなどは控える(術後1カ月間)
食事に制限はありませんが、腹7~8分目を心掛け、徐々に通常の食事に戻していきましょう。
※参考:公益財団法人がん研究会 有明病院.「がん治療と食事」.
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/meal/index.html,(参照 2024-09-03).
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.”大腸がん(結腸がん・直腸がん) 療養”.
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/follow_up.html,(参照 2024-09-05).
(3)膵臓切除後の食事
膵臓切除後は、胃や腸に負担をかけない食事を心掛けましょう。術後は膵臓の消化吸収機能が低下しています。以下のポイントに気を付けて食事を摂りましょう(※)。
- 30分以上かけて、一口ずつよく噛んで食べる
- 下痢が頻繁に起こる場合は、水分補給を十分に行う
- 血糖が上昇した場合は、甘いジュースやお菓子の摂取を避ける
- コーヒーや紅茶は控えめに、飲酒は担当医に相談する
吐き気や胃もたれなどが起こった場合は、無理をせず1日5~6回に分けて食事を摂りましょう。なるべく大豆製品や魚などの良質なタンパク質を摂取するのが望ましいです。
なお、通常の食事に戻した後に血糖値が上昇した場合は、医師や管理栄養士に食事量を相談してください。
※参考:公益財団法人がん研究会 有明病院.「がん治療と食事」.
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/meal/index.html,(参照 2024-06-03).
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.”膵臓がん 療養”.
https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/follow_up.html,(参照 2023-02-20).
(4)頭頸部の手術後の食事
頭頸部の手術をした後は、ゼリーやペースト食、軟菜食などの軟らかいものを摂取しましょう。
ただし、嚥下(飲み込み)が難しい場合は注意が必要です。飲み物や食べ物が食道ではなく肺に入ると炎症を起こす可能性があります。飲み込みにくさを感じた場合は、医師や看護師、管理栄養士、言語聴覚士に相談の上、食事のサポートをしてもらいましょう(※)。
※参考:公益財団法人がん研究会 有明病院.「がん治療と食事」.
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/meal/index.html,(参照 2024-06-03).
がん治療中の食事で注意すべきポイントとは?
がん治療中は、治療過程で起こる副作用や体調の変化に注意しながら食事を摂る必要があります。
体調が悪いときは、無理をせずご自分が「食べたい」と思ったものを口にするようにしましょう。他にも主食や主菜から食べてみたり、エネルギーやタンパク質を摂取できる乳製品や果物を食べてみたりするのも良いです。食べられそうなら野菜も摂取してみましょう。食事の合間で水分補給を忘れないようにしてください(※)。
また副作用が出たときは、以下の症状別の食事ポイントをご参考ください。
※参考:公益財団法人がん研究会 有明病院.「がん治療と食事」.
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/meal/index.html,(参照 2024-06-03).
1. 食欲がないときの食事
食欲がないときは、豆や肉、魚、卵、ヨーグルトなどのタンパク質が豊富な食事を少しずつ摂取してみましょう。食事のタイミングは、気分や体調が優れているときや空腹を感じたときで構いません。固形物を摂取したくない場合は、ミルクセーキやスムージーなどのジュースを飲みましょう。
また食欲を増進させるためにも、香りが良い食事を心掛けたり、日中はできるだけ活動的に過ごしたりするのもおすすめです(※)。
※参考:国立がん研究センター東病院.「食欲不振」.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/advice/010/index.html,(参照 2024-09-05).
※参考:公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構.「がん情報サイト」.“がん医療における栄養(PDQ®)”.
https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000286996,(参照 2024-03-25).
2. 吐き気や嘔吐があるときの食事
治療法によっては吐き気や嘔吐が出る可能性があります。その場合は、食欲がないときの対処法と同じく「食べたい」と思ったものを食べるようにしましょう。
やみくもに食べずに、あっさりめで消化の良い食べ物やクラッカー、トーストなどの乾燥食材、ヨーグルトやスープなどを摂取するのがおすすめです。胃に何も入っていない状態が続くと吐き気が強くなる場合があるため、1日5~6回に分けて数量ずつ食べましょう。満腹感を覚えにくくするためにも、食事中は水分を取り過ぎないようにしてください。
部屋は熱過ぎず寒過ぎない温度に設定し、十分な換気を行いましょう。ペパーミントやレモンドロップなどのキャンディーで口直しをするのもおすすめです。
嘔吐してしまった場合は、嘔吐が治まるまで食事は控えましょう。止まったら清澄液を飲んで、背筋を伸ばして前方に体を傾けた状態で座ってください。ただし、これらはあくまで対策になるため、症状の重さによっては医師に吐き気止めを処方してもらいましょう(※)。
※参考:国立がん研究センター東病院.「吐き気・嘔吐」.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/advice/020/index.html,(参照 2024-09-05).
※参考:公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構.「がん情報サイト」.“がん医療における栄養(PDQ®)”.
https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000286996,(参照 2024-09-05).
3. 体重が落ちているときの食事
体重が落ちているときは、間食を取り入れながらエネルギーの源となる高タンパクな食べ物を摂取しましょう。例えば、良質なタンパク質の肉類や魚類、栄養価の高い卵や乳製品、ナッツ類などが適しています。飲み物は、牛乳やヨーグルトなどを積極的に飲みましょう。また、料理にはちみつやジャムで糖分を加えるのもおすすめです(※)。
ただし、一度にまとめて摂取すると胃に負担をかけるため、食事を小分けにして少量ずつ摂取してください。
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.“がんと食事”.
https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/index.html,(参照 2024-09-05).
4. 味覚の変化があったときの食事
抗がん剤治療や放射線治療では、味覚の変化が見られる場合があります。
その場合は、スパイスやソースを使って料理に風味を加えたり、酸味のある食べ物や飲み物を試したりしてみましょう。肉や魚の臭みが気になるときは、アク抜きやくさみ消しを十分に行います。クランベリーソースやゼリーなどの甘いものと合わせて食べるのもおすすめです。赤身肉に苦さを感じるようであれば、鶏肉や魚、チーズなどで代用してみましょう(※)。
口内が乾燥しているときは、主菜に汁物を添えてみてください。あんかけ料理やマヨネーズ和えなどの料理を添えても構いません。
また患者さんによっては、金属製の食器だと苦さを感じる場合があります。その際は、プラスチックや木製の食器に変えてみましょう。
※参考:国立がん研究センター東病院.「味覚変化」.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/advice/030/index.html,(参照 2024-09-05).
※参考:公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構.「がん情報サイト」.“がん医療における栄養(PDQ®)”.
https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000286996,(参照 2024-09-05).
5. 食べにくさ、飲み込みにくさを感じるときの食事
口内炎や喉の痛み、嚥下障害によって食べにくさや飲み込みにくさを感じた場合は、軟らかくて飲み込みやすい食べ物を1日5~6回に分けて摂取しましょう(※)。
料理はよく煮込んだり、ソースやだしなどで汁気を加えたりするのもおすすめです。固形物は細かく切り、食べやすい大きさにしましょう。また、味が濃い食べ物や熱い料理は喉への刺激が強いため避け、飲み物はストローで飲むと良いです。
食べにくさや飲みにくさを感じているときに無理して食事をすると、食べ物が気管に入って炎症を起こす可能性があるため注意しましょう。食べるときは、前方に少し体を傾けた状態で背筋を伸ばして座ります。座れない場合は、寝たままの状態で体を45~60度程度に起こしてから食事をしましょう。
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.“がんと食事”.
https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/index.html,(参照2024-09-05).
※参考:公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構.「がん情報サイト」.“がん医療における栄養(PDQ®)”.
https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000286996,(参照 2024-09-05).
がんに「食事療法」は効果がある?
がんの治療法を調べているときに「食事療法」といった治療法を耳にした方もいるのではないでしょうか。
結論をいうと、食事療法ががんを直接的に治す方法として有効かどうかは科学的に証明されていません。代表的なものではサプリメントや健康食品などが挙げられますが、これらにがん細胞を死滅させたり、腫瘍を縮小させたりする効果があるかどうかは分かっていないのが現状です(※)。
現在の日本での主ながんの治療方法は、手術や抗がん剤治療、放射線治療、免疫療法の4つです。また、新たな治療法として光免疫療法が注目されています。これらは科学的根拠に基づく治療法のため、がんに効果が出やすいといわれています。科学的根拠がない食事療法を従来の治療法の代わりにするのは危険です。
サプリメントや野菜ジュースの中には「がんに効果的」「糖質制限」などと記載している商品がありますが、場合によっては治療に悪影響を及ぼす可能性もあります。理由は以下の通りです。
- 健康食品であっても、がん治療を妨げる成分が含まれている可能性がある
- 栄養バランスが崩れて健康被害が出る可能性がある
- 服用中の薬との飲み合わせで治療効果が出にくくなる
特定の食品やサプリメントなどを摂取したい場合は、ご自分の体を守るために必ず医師に相談しましょう。
総じて重要なのは、栄養バランスの取れた食事を心掛け、個々の状況に応じて食事量や回数を調整することです。適切な食事管理の下、がん治療を行いましょう。
※参考:国立がん研究センター.「がん情報サービス」.“がんと民間療法(健康食品・サプリメント・食事療法を中心に)”.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/cam/health_food_products.html,(参照 2024-09-05).
がん治療中は無理をしない程度に食事を楽しもう
がん患者さんにとって食事は、治療の影響で失った組織の再生や体力の回復のためにも重要です。体調が良いときは、主食、主菜、副菜の3つをバランス良く摂取するのが良いですが、体調が悪いときは無理をせず、食べたいと思ったときに消化の良いものを食べるようにしましょう。
副作用が起こったときは、今回紹介した食事のポイントを参考にしながら少しずつ食べ物を口にしてみましょう。症状がひどいときは、医師や看護師に相談してください。
瀬田クリニック東京では、個別化された免疫細胞治療を行っています。患者さんお一人おひとりのがん細胞の特徴を調べ、複数の治療法の中から最適な療法を見極め治療をご提供しております。
免疫細胞治療はがん細胞のみを攻撃する治療法で副作用が少ないといわれている治療法です。できるだけ体に負担をかけずにがん治療を行いたい患者さんは、ぜひ瀬田クリニック東京にご相談ください。
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