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重粒子線治療の
特徴やメリット・デメリットについて解説

投稿日:2024年6月28日

更新日:2024年6月28日

重粒子線治療は、がんに対する放射線治療の一つです。放射線治療にはさまざまな種類があります。重粒子線治療は、どのような特徴がある治療方法なのでしょうか。

この記事では、重粒子線治療の特徴やメリット・デメリット、重粒子線治療以外の治療方法について解説します。がんの治療について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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重粒子線治療とはがんに炭素線を照射する治療方法

重粒子線治療とは、炭素イオンを使用した重粒子による放射線ビームをがんに照射する治療方法です。手術療法と抗がん剤治療、放射線治療はがんに対する三大治療と呼ばれ、重粒子線治療は放射線治療の手法の一つとして位置付けられています。ここからは重粒子線治療の特徴について詳しく見ていきましょう。

重粒子線治療は外部照射による放射線治療

放射線治療には、以下のようにさまざまな種類があります。重粒子線治療は、外部照射による治療の一つです。

【外部照射】
  • ●電子線
  • ●X線
  • ●γ線
  • ●陽子線・重粒子線
  • ●中性子線
【内部照射】
  • ●密封小線源治療(X線、β線、γ線など)
  • ●非密封放射性同位元素による治療(α線、β線、γ線など)

放射線治療は、上記のように外部照射と内部照射の2つに大きく分けられます。名前の通り、外部照射は身体の外側から放射線を当てる治療、内部照射は身体の内側から放射線を当てる治療のことです。

重粒子線治療は、がんに対する先進医療の一つとして注目されています。

重粒子線治療はがんを集中的に攻撃できる

重粒子線治療の大きな特徴は、X線などによる治療と比較すると、標的とするがんに集中的に照射できることです。一般的な放射線治療で使われるX線は、身体の表面近くで放射線量が大きくなり、その後身体の中に入ると吸収される放射線量が少しずつ減ってしまいます。

一方重粒子線の場合は、身体の中に入って停止する直前にエネルギーを放出するため、標的とする細胞に対して大きな線量を照射することが可能です。がんが存在する位置や病巣の大きさに合わせてピークを調整することで、集中してがんを攻撃できます。また正常な組織へ与える影響に配慮することも可能です。

重粒子線治療と陽子線治療の違い

次に重粒子線治療と陽子線治療の違いを解説します。重粒子線治療と陽子線治療は、どちらも高いエネルギーを持つ粒子を照射してがん細胞を攻撃する治療方法です。両者の違いは治療に用いる原子核などです。

陽子線治療においては水素の原子核を用いますが、重粒子線治療では炭素の原子核を用います。炭素の原子核の質量は、水素の原子核より12倍大きいため、より大きなエネルギーを使ってがん細胞を攻撃できます。特に骨肉腫や骨軟部の腫瘍など、一般的な放射線治療ではうまく治療ができなかったがんに対しても、攻撃することが可能です。

ただし重粒子線治療にはリスクもあります。大きなエネルギーでがん細胞を攻撃するため、他の細胞に対しても影響を与える可能性があるのです。担当の医師の説明をよく聞いた上で、適した治療方法を選ぶようにしましょう。

一方で陽子線治療の場合は、一般的な放射線治療と比較すると高いエネルギーで攻撃できるものの、がん細胞に特化して照射することが可能であるため、他の細胞への影響は重粒子線治療に比べて大きくはありません。広い範囲に存在するがん細胞の治療をする際にも採用され、重粒子線治療よりも幅広い場面で適用されます。また一般的な放射線治療と比較して副作用を抑えられる点もメリットの一つです。

重粒子線治療・陽子線治療は保険適用の可能性がある

重粒子線治療と陽子線治療は患者さんが加入している保険によっては保険適用となる可能性があります。手術による根治的な治療が難しい骨軟部腫瘍や頭頸部悪性腫瘍、肝細胞がん、肝内胆管がん、局所大腸がん、局所進行性前立腺がんなどの場合は、保険が適用される可能性もあるため事前に確認しておきましょう。ただし医学的な状況によって判断されるため、当該のがんであっても保険適用とならないケースもあります(※)。保険適用ができないケースに関しては、後述する重粒子線治療のデメリットを確認してください。

※参考:がん情報サービス.「放射線治療の種類と方法」. "1.放射線治療の種類" .https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_03.html,(参照 2023-04-24).

重粒子線治療の3つのメリット

重粒子線治療のメリットとしては、殺傷効果が大きいこと、短期間で治療できること、身体を切る必要がないこと、副作用を抑えられることなどが挙げられます。それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

1. 殺傷効果が大きい

殺傷効果が大きいことは、重粒子線治療のメリットの一つです。前述の通り、重粒子線治療で用いる炭素イオンは、陽子線治療で用いる水素イオンの12倍も質量が大きく、がん細胞を効果的に攻撃できます。殺傷効果としては陽子線治療の2~3倍であり、深い部分に存在するがんや、骨肉腫などの特殊ながん、低酸素領域のがんの治療にも採用されます。

2. 短期間で治療できる

他の治療方法と比較して短期間で治療できることも、重粒子線治療のメリットです。殺傷効果が大きいため、一般的な放射線治療と比べると、照射回数を減らすことができます。状況によって異なりますが、一日1回の照射を、週に3~5回ほどの頻度で実施することが一般的です。

一回の治療時間は15~30分ほどで、回数が多い場合は合計30~40回ほど継続することがあるものの、状況によってはさらに少ない回数で治療を終えるケースもあります。治療期間は平均3週間程度です。入院治療だけではなく通院での治療もでき、体力が衰えている高齢者などのがん治療にも採用されます。

3. 身体を切る必要がなく副作用を抑えられる

重粒子線治療を含む放射線治療においては、体を切開する必要はありません。身体を傷つけずに治療を進められることは、大きなメリットといえるでしょう。

また副作用をできる限り抑えることも可能です。先述の通り他の細胞への影響をゼロにすることは難しいですが、広い範囲に照射する一般的な放射線治療と比較すると、がんを集中的に攻撃でき、正常な細胞へのダメージや副作用をできる限り抑えられます。

重粒子線治療の3つのデメリット

重粒子線治療にはさまざまなメリットがある一方、いくつかのデメリットもあるため注意しなければなりません。治療を受ける前にデメリットについても理解しておきましょう。

1. 治療費が高い

他の治療方法と比較して、治療費が高くなりがちなことは重粒子線治療の大きなデメリットです。保険適用となるケースは限られており、全額自己負担となることもあるかもしれません。重粒子線治療は高度先進医療として位置付けられているため、診察や検査などは保険の対象となりますが、治療に対しては公的保険が適用されません。

ほとんどのケースでは高度先進医療として取り扱われ、治療費は約300万円となることが平均的です。個人の負担額が大きくなるため、先進医療特約が付いている保険に加入している場合は、うまく活用すると良いでしょう。

2. 全てのがんに適用できるわけではない

重粒子線治療は、全てのがんに適用できるわけではありません。重粒子線治療の対象となるのは、一つの部位にとどまっている固形のがんです。胃や大腸など、不規則に動く臓器のがんには適用されません。

主な対象としては、食道がんや肺がん、膵臓がん、肝臓がん、子宮がん、直腸がん、脳腫瘍、頭頚部がん、前立腺がん、骨肉腫、軟部組織腫瘍が挙げられます。また過去に放射線治療を受けていないことも条件となっているため注意しましょう。

3. 対応している病院が少ない

対応している病院が少ないことも、重粒子線治療のデメリットの一つです。重粒子線治療を実施するためには高額の設備が必要となるため、導入している施設は少なく、治療の専門家も多くありません。2023年3月時点で、炭素イオンを使った重粒子線治療を行える病院は7施設にとどまっています(※)

対応している病院や専門家を探すのに苦労するだけではなく、遠い場所まで通院しなければならないケースもあります。治療のために時間や交通費がかかってしまう場合があることも考慮しておきましょう。

※参考:がん情報サービス.「放射線治療の種類と方法」. "5)粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)" .https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_03.html,(参照 2023-04-24).

重粒子線治療以外の治療方法を紹介

がんに対する対処方法は、重粒子線治療だけではありません。ここでは重粒子線治療以外の治療方法について詳しく解説します。

1. 一般的な高エネルギー放射線治療

一般的な高エネルギー放射線治療は、X線や電子線を用いる治療方法です。直線加速器という装置を使用して、高エネルギーのX線や電子線を発生させ、がんを攻撃します。照射する方法としては、一つの方向から照射する「1門照射」、向かい合う二つの方向から照射する「対面2門照射」、さまざまな方向から照射する「多門照射」などがあります。

高エネルギー放射線治療は、数週間継続して行うことが一般的です。治療の回数は、患者さんのがんの状況や治療の目的を担当医師が考慮して決定します。放射線を十分に照射することで、がん細胞を死滅に追い込みます。

2. 三次元原体照射

三次元原体照射(3D-CRT)は、がんの形状や大きさを立体的に把握した上で、放射線を照射する治療方法です。CTやMRIなどによる画像データを基に、がんの形状や位置、正常な細胞との位置関係などを把握します。がん細胞に対して放射線を適切に照射できるのはもちろん、周囲の組織に配慮して照射することが可能です。

3. 強度変調放射線治療

強度変調放射線治療(IMRT)とは、強弱のある放射線を使ってがんを照射する治療方法です。専用のコンピューターを使って放射線の強弱を調整しながら、がん細胞には強い放射線を、その他の細胞には弱い放射線を与えることができます。

4. 免疫療法

ここまで放射線治療について紹介しましたが、その他の方法も存在します。免疫療法は、手術や放射線に頼らない新しい治療方法です。人間の身体にはもともと免疫機能があり、細菌やウイルスなどが侵入するのを防いだり排除したりしています。この免疫機能を応用した治療方法が免疫療法です。

免疫療法において重要な役割を担っているのは、T細胞(Tリンパ球)と呼ばれる免疫細胞です。T細胞は血液中の白血球の一つであり、がんを攻撃する性質があります。本来はT細胞が発生したがん細胞を攻撃して排除するのですが、がん細胞がT細胞のはたらきにブレーキを掛けると、免疫機能が弱まり、がんを排除できないこともあります。

免疫療法の大きな特徴は、このT細胞のはたらきを強めたり、ブレーキが掛かるのを防いだりすることです。「瀬田クリニック東京」でも免疫細胞療法を実施していますので、がん治療でお悩みの方はぜひご相談ください。

免疫細胞治療について詳しくはこちら

重粒子線治療はがんに対する放射線治療の一つ

本記事では重粒子線治療の特徴やメリット・デメリットについて、詳しく解説しました。

重粒子線治療は放射線治療の一つであり、高いエネルギーを持つ粒子を照射してがんを攻撃することが大きな特徴です。他の放射線治療に比べて殺傷効果が大きく、短期間で治療できるなどのメリットがありますが、対応できる病院が少なく、治療費が高いというデメリットもあります。医師と相談しながら、さまざまな治療方法の中から適したものを選びましょう。

「瀬田クリニック東京」では、個別化がん免疫療法に取り組んでいます。個別化療法とは、遺伝子解析などを通して、患者さん一人ひとりの体質に合った治療方法を提供することです。がん細胞の遺伝子検査や免疫組織化学染色検査などを行い、多くの免疫療法の中から患者さんに適した手法を選択しますので、ぜひご相談ください。

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