大腸(直腸)がんに対する免疫細胞治療の症例紹介
瀬田クリニックグループでがん免疫療法(免疫細胞治療)を受けられた直腸がんの方の症例(治療例)を紹介します。症例は治療前後のCT画像や腫瘍マーカーの記録など客観的データに基づき記載しています。
直腸がんの症例
症例①66歳 男性直腸がんの両側肺転移切除後にアルファ・ベータT細胞療法単独治療を実施し、長期間再発を抑えられた例
治療までの経緯
2004年6月、肛門に違和感があり検査を受けたところ直腸がんと診断され、翌月に直腸切除術を施行。その後、経過観察を行っていましたが、2005年6月に両側肺転移が認められたため化学療法を開始しました。様々な化学療法が施行され、唯一、FOLFOX4で腫瘍縮小の効果が見られましたが、副作用が強く使えなくなりました。それ以外の化学療法では腫瘍の増大傾向を示すなど、利用可能な化学療法が限定されました。
両側肺転移に対する肺切除は、再発する可能性が高いと予想されましたが、患者さんご本人が切望したため、2007年3月27日に肺転移切除術を施行しました。同年6月、患者さんご本人の希望により、再発予防目的で免疫細胞治療を行うために当院を受診。
治療内容と経過
2007年6月より、アルファ・ベータT細胞療法を単独で開始しました。初めの6回目までは2週間間隔で投与し、その後は1ヶ月間隔に延ばし、さらに2013年4月以降は2ヵ月間隔で継続投与しています。免疫細胞治療開始から7年経過後の2014年12月現在も無再発かつ良好な全身状態で経過しています。
考察
直腸がん切除後の両側肺転移に対して、肺転移切除後からアルファ・ベータT細胞療法を単独で行い、長期に亘り良好な全身状態を維持しながら継続治療できている一例です。また、経過観察しながら適宜、治療間隔を延ばすことが可能な治療法です。このことは患者さんの経済的負担軽減にも寄与されるものと思われます。
化学療法のように身体に負担をかけることなく長期に亘り継続治療できるという免疫細胞治療の特徴をよく表している一例であると考えます。
進行直腸がんの治療
直腸がんの代表的な化学療法剤は5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチンであり、これらを組み合わせて使われます。他にも様々な化学療法剤が使われます。
切除可能な肺転移の治療については肺切除が推奨されますが、片肺転移切除後の再発率は61.3%と高頻度に認められています。
症例②62歳 女性化学療法とアルファ・ベータT細胞療法との併用により、肺転移巣が消失した例(直腸がんⅣ期)
治療までの経緯
2004年6月、直腸がんおよび多発性両肺転移と診断され、8月には肛門機能を温存する手術を実施。手術後より化学療法(TS-1)を開始しました。なお、肺以外の転移は画像上ありませんでした。
治療内容と経過
原発巣である直腸がんの除去手術から2か月後の2004年10月、当クリニックを紹介され、ご来院。化学療法とアルファ・ベータT細胞療法を併用することになりました。
その結果、治療を開始して一か月後の2004年11月22日には肺の転移巣は消失していました(写真)。 2004年12月にはアルファ・ベータT細胞療法を終了(6回投与)しましたが、治療を実施している間も、特に副作用は認められず、自覚症状も良好でした。なお、腫瘍マーカー(CEA)も治療開始前より低下がみられ、正常範囲を推移していました。
治療終了から約4か月後のCTでも肺に異常を認めず、同じく治療終了後6か月時点での腫瘍マーカー(CEA)も正常値を維持しています。
考察
直腸がんでは遠隔転移がある場合でも、その後の腸閉塞発症を考え、原発巣を切除する場合が多いです。転移巣に対しては化学療法(TS-1)の有効性が報告されていますが、完全に転移巣が消えることはほとんどありません。この患者さんの場合は手術後のTS-1に併用してアルファ・ベータT細胞療法を行ったところ、腫瘍マーカー(CEA)はすみやかに正常化し、3ヶ月後のCTでは肺の転移巣が消えていました。これまでの当院の治療成績ではアルファ・ベータT細胞療法は比較的肺と肝への有効率が高く、この患者さんも多発とはいえ、肺の転移巣が小さかったことが治療の有効性につながっていると考えています。
治療の経過
- 2004年10月5日
- 当院を受診、アルファ・ベータT細胞療法の併用治療を開始。肝臓やその他に画像上転移はなし
- 2004年11月22日
- CTで肺の転移巣が消失。CEAも術後より低下し、正常範囲となった
- 2004年12月14日
- アルファ・ベータT細胞療法6回を終了。その間特に副作用はなく、自覚症状は良好
- 2005年3月29日
- CTで肺には異常がなく、CEAも2005年6月現在まで正常値を維持している