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肺がんに対する免疫細胞治療の症例紹介

瀬田クリニックグループでがん免疫療法(免疫細胞治療)を受けられた肺がんの方の症例(治療例)を紹介します。症例は治療前後のCT画像や腫瘍マーカーの記録など客観的データに基づき記載しています。

症例①
女性60歳 女性
Ⅳ期の肺癌に対し、分子標的薬と樹状細胞ワクチン、アルファ・ベータT細胞療法を併用することにより、長期間、病気の進行を抑えられた一例

※患者さんの最新状況を追記して再掲載しました(2019.9.19)

治療までの経緯

2011年1月にリンパ節転移・多発肺内転移のある右肺の腺癌(臨床進行期:Stage Ⅳ)と診断され、同年3月初旬より化学療法(シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ)による治療を4週間間隔にて開始しました。当院には同年2月末に受診、過去に採取した生検組織でがんの特徴を調べる免疫組織化学染色検査※を行ったところ、この患者さんのがん細胞には免疫細胞の攻撃の目印が出ている状態だとわかった為、自己がん細胞感作樹状細胞ワクチンが最良の治療法と判断されました。

※免疫組織化学染色検査

肺がんに対する免疫療法case_16_1がん細胞は免疫細胞の攻撃から逃れるために、がんの目印を隠してしまう場合があります。
そこで、検査によって免疫細胞が攻撃の目印とする分子(MHCクラスⅠ)ががん組織上にどの程度発現しているかを調べ、患者さんのがん細胞の状態に適した治療法を選択する為の検査です。

いろいろな種類の免疫細胞治療がありますが、がん細胞の特徴を捉え、最も効果的と考えられる治療法を選択することが重要です。

case_16_2この患者さんの場合は、約90%のがん細胞にMHCクラスⅠの発現が見られ、染色強度は中等度でした。

治療内容と経過

2011年3月初めに自己がん組織を使う為、右鎖骨上の転移リンパ節を切除し、そのがん組織から得た抗原を独自の最新技術(セル・ローディング・システム※)を使って樹状細胞に取り込ませ、5月末より樹状細胞ワクチンを2週間間隔で行いました。体内のT細胞を増加させる為、アルファ・ベータT細胞療法は、4月末に1回先行させ、その後は4週間間隔で治療を続けました。化学療法を6月始めまで4回行い、免疫細胞治療を3回行った後、6月のCTでは原発巣および転移巣のがんが縮小していると判断されました。(Fig.1〜2)その時点でシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブの化学療法は終了し、7月より維持療法としてベバシズマブのみの治療を3週間間隔で継続し、がん細胞の遺伝子変異の結果からEGFRの変異があったため2012年11月からはベバシツマブと併用してエルロチニブを開始しました。樹状細胞ワクチンは2011年12月までに12回行い、アルファ・ベータT細胞療法を2019年現在まで月に1回継続しています。2012年5月末のCTでも腫瘍は安定しており、エルロチニブ開始後の2013年5月初旬のCTではさらに原発巣の肺のがんは縮小していました(Fig.4)。
その後はタルセバとアルファ・ベータT細胞療法を継続することで長期の安定に入ります。2019年までがんは若干の増大と縮小を繰り返しますが、7年近く、ほぼ安定して経過しました(Fig5,6)。
さらに、根治を目指して2019年4月には肺のがんを胸腔鏡下の手術で切除しました。切除組織の一部はネオアンチゲンの解析に使用しました。2019年9月の時点で画像上、確認できるがんはありません。なお、ネオアンチゲンの解析は既に終了し、今後、万が一、再発徴候などある場合はネオアンチゲン樹状細胞ワクチンを行うこととしています。

肺がんに対する免疫療法case16

考察

このケースは縦隔から鎖骨上までのリンパ節転移があり、また、肺内の微小転移もあったため、手術はあきらめ、薬物療法と免疫細胞治療で治療を行いました。幸い、治療が奏効し、腫瘍は縮小、さらに7年間にわたって長期にがんは悪化することなく安定した経過をとりました。7年間の間に免疫細胞治療も進歩、発展しており、最新の方法であるネオアンチゲン樹状細胞ワクチンも選択可能となっていました。2019年に切除した組織を使ってネオアンチゲン解析も行えました。現状でも根治の可能性はありますが、万が一、今後、再発がある場合はネオアンチゲン樹状細胞ワクチンも試みることができます。また、遺伝子パネルの検査も行い、適合する分子標的薬に関しても調査中です。薬物療法も免疫細胞治療も7年前とは違った新たなアプローチが可能となっています。長期の生存はそれ自体、がん治療の目的で有り、重要ですが、当初はなかった新規治療の登場に出会えるという大きな意義もあります。

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症例②
女性68歳 女性
セカンドラインとしてのガンマ・デルタT細胞療法により長期安定が得られている症例(Ⅲb期肺腺がん)

治療までの経緯

2006年検診にて異常陰影があり、精査したところ、胸膜播種、リンパ節転移のあるⅢb期肺がんと診断されました。同年5月から翌2007年6月まで化学療法(カルボプラチン、パクリタキセル)を行いましたが、がんの縮小までには至らなかったため化学療法は一旦終了となり、2007年9月に当院を受診されました。

治療内容と経過

多少の変化を繰り返しながらも長期的に安定

2007年10月よりアルファ・ベータT細胞療法の単独治療を開始し、12月19日に1クールの治療が終了しましたが、進行していたため、治療を終了して経過観察していました。化学療法の再開も勧められましたが、2008年3月、ご本人の希望もありガンマ・デルタT細胞療法単独での治療を開始しました。2008年11月のCTまで、癌はほぼ安定しており、CEAの上昇もなく経過していました。しかし2009年4月のCTでは進行が見られ、CEAは徐々に上昇したため、5月より化学療法(ドセタキセル)を再開しました。9月のCTでがんは縮小したため、化学療法は終了し、再びガンマ・デルタT細胞療法単独治療となりました。2010年1月にCEAの上昇傾向が見られ、1月から4月まで化学療法(ペメトレキセド)を追加、その後は、診断後、ほぼ5年間となる2011年7月まで、ガンマ・デルタT細胞療法単独での治療により、CEAの上昇もなく、がんの進行はなく安定を維持しています。

考察

2010年1月にCEAの上昇傾向が見られ、1月から4月まで化学療法(ペメトレキセド)を追加、その後は2011年7月まで1年3ヶ月間、ガンマ・デルタT細胞療法単独での治療により、CEAの上昇もなく、がんは安定を維持することができました。

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症例③
男性41歳 男性
化学療法と免疫細胞治療により、長期にわたり再発が抑えられた一例

治療までの経緯

1999年5月、左側の首のリンパが腫れたため検査したところ、左肺の腺がんと診断されました(病期はT4N3M1)。同年7月に瀬田クリニックグループ(東京)を受診。

治療内容と経過

肺がんに対する免疫療法test3

化学療法と免疫細胞治療の併用による治療を行うことになりました。化学療法はシスプラチンとパクリタキセルを4週間間隔で、免疫細胞治療はアルファ・ ベータT細胞療法を2週間間隔で行ったところ、1999年9月の胸部CTでは部分的に腫瘍が消え、12月の胸部CTでは肺の腫瘍は完全に見られなくなりました。
その後4週間間隔でアルファ・ベータT細胞療法とカルボプラチンによる化学療法を行いましたが、2000年10月に再び肺に腫瘍が見つかり、リンパ節の生検で腫瘍細胞も見つかりました。
そのため抗がん剤を変更しながらアルファ・ベータT細胞療法との併用を続け、2000年12月からはリンパ節への放射線療法も行いました。 リンパ節の腫瘍はほぼ消えましたが、右肺の腫瘍はできたり消えたりを繰り返しました。2003年からはゲフィニチブ(イレッサR)という抗がん剤による治療も行いました。
アルファ・ベータT細胞療法は2003年12月で終了し、経過観察を行っています。

考察

腺がんのような非小細胞性の肺がんに対しては、免疫細胞治療のみでは今のところ、必ずしも十分な治療効果が得られているとはいえません(長期不変を含めた有効率17.2%、奏効率4.7%)。
しかし一方で、化学療法等の他治療と併用すると、手術後の補助療法(再発予防)としての有効性が報告されています。この症例においても、免疫細胞治療、化学療法、放射線療法を組み合わせた「集学的治療」が、長期にわたりがんの進行を抑えることにつながったと考えられます。

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症例④
男性84歳 男性
高齢の患者さんの再発進行期肺がんに対し、免疫細胞治療を単独で行って、長期にわたり病気の進行を抑えられた一例

治療までの経緯

2002年、左肺に腫瘍が見つかり、手術で切除。非小細胞がん(病期はsT1N0M0,StageⅠA)と診断されましたが、高齢のためその後の化学療法は行わず、経過観察をしていました。
2005年6月以降、腫瘍マーカー(CEA)が上昇してきたため、同年8月にCT検査を受けたところ右肺や右鎖骨上のリンパ節などに転移が見つかりました。高齢で化学療法や放射線療法が行えないため、本人の希望で同年9月、瀬田クリニックグループ(新横浜)を受診。

治療内容と経過

肺がんに対する免疫療法

同年10月よりアルファ・ベータT細胞療法を2週間間隔で行ったところ、腫瘍マーカーは徐々に低下しました。画像検査ではリンパ節の腫瘍は大きくなっていたものの、アルファ・ベータT細胞療法をさらに続けたところ、2006年1~3月の間に腫瘍マーカーは低下を続け、さらに、転移していた腫瘍の中にも小さくなるものが出てきました。
咳や痰といった症状も出ておらず、2006年現在4~5週に1度のアルファ・ベータT細胞療法を続けています。

考察

肺がんが再発し、大きくなる傾向が見られていましたが、免疫細胞治療を行うことで、半年以上にわたりゆるやかに小さくなっていきました。また、症状があらわれず、QOL(生活の質)を落とさずにがんを小さくすることができるというのも、免疫細胞治療の大きな特徴の一つです。

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