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放射線治療と免疫療法併用への期待-②
院長ブログ

投稿日:2024年12月23日

更新日:2024年12月23日

前回のブログでは放射線治療のアブスコパル効果についてお話しました。
2回目となる今回は、アブスコパル効果の症例などもご紹介しながら更にご説明したいと思います。

放射線治療が免疫療法の効果をパワーアップさせる?

アブスコパル効果が極めて稀である以上、放射線治療だけでは、がん細胞に対する免疫応答が誘導、増強されても、がんを縮小させるまで強力ではないといえます。現状は、放射線治療が免疫療法そのものの効果を増強することが期待されています。2012年には、放射線治療により免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブの効果が増強されたことを示すケースレポートがNew England Journal of Medicine誌に掲載されています。
Immunologic Correlates of the Abscopal Effect in a Patient with Melanoma
(メラノーマ患者におけるアブスコパル効果の免疫学的関係)
Postow MA. et al., N Engl J Med. (2012) Mar 8; 366(10): 925-31.

この論文で報告されている胸膜、肺門リンパ節、肝、脾臓転移を生じたメラノーマ患者において、免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブでの治療では、徐々にがんが進行していました。しかし、胸膜播種のみに緩和的放射線治療を行ったところ、胸膜のみでなく、肺門リンパ節、肝、脾臓の腫瘍も縮小、それに伴いがん細胞に対する全身的な免疫応答が観察さました。

がん免疫療法を併用してアブスコパル効果を生じた症例(15の論文で報告された24症例)について下記の論文に臨床データの概要が纏められています。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6476623/pdf/cureus-0011-00000004103.pdf
現在、免疫チェックポイント阻害薬などと放射線治療の併用療法の臨床試験が積極的に行われ、よい結果がでています。

瀬田クリニックで経験したアブスコパル効果

それでは、瀬田クリニックでも放射線治療と免疫細胞療法により、アブスコパル効果に伴う転移病巣の著しい縮小を経験していますので、ご紹介します(下図)。

60歳、男性、下顎血管肉腫術後、多発骨転移再発

《治療前》

胸椎転移

肋骨転移

疼痛緩和目的で胸椎のみへ緩和的放射線治療とガンマ・デルタT細胞療法を行いました

《四ヶ月後》

胸椎転移

肋骨転移

胸椎転移は放射線治療により骨化し回復。放射線をあてていない肋骨のがんも著しく縮小がみられました

ところで、放射線をあてることは免疫の活性化を生じる反面、リンパ球へのダメージからT細胞が減少し、免疫応答が低下するという逆の作用も存在します。できるだけ、効率よく免疫応答を誘導する放射線照射の工夫も今後は検討されるべきと考えます。

前回と今回ではアブスコパル効果についてお話してきました。
最終回となる次回は、今回最後に述べた『効率よく免疫応答を誘導する放射線照射の工夫』について考えていきたいと思います。

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◆院長ブログバックナンバー
-放射線治療と免疫療法併用への期待-①
-がん治療の効果の矛盾―③
-体内に投与した免疫細胞の寿命はどのくらいですか?②
-体内に投与した免疫細胞の寿命はどのくらいですか?①

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