体内に投与した免疫細胞の寿命はどのくらいですか?①
院長ブログ
患者さんからよく受ける質問の1つに「投与した細胞は体の中でどのくらいの間、働くのですか?」というものがあります。私は、ほぼ半永久的とお応えして、根拠を説明しています。今回は、その根拠についてお話させていただきます。
まず、以前のブログで医学情報は下記の様に1次から5次まであるとお伝えしました。
- ‐1次情報:
原著論文・臨床試験データ・疫学データ - ‐2次情報:
学会や公的な組織における専門家集団による上記の要約と推奨 - ‐3次情報:
個人の意見や解釈(書籍・記事) - ‐4次情報:
個人の意見や解釈(インターネット上の記載、ブログやSNS) - ‐5それらの伝聞
ここでは、医療の議論は学術論文という1次情報の土俵で行わなくてはいけないこと、そして瀬田クリニック東京では、議論は科学的な1次情報の場でのみ行うことを心がけてきたことをご説明しました。
そこで、これから私たちの研究の学術論文をいくつかご紹介しながら解説させていただくことにします。
論文①
私たちの治療(免疫細胞治療)では体内に存在する免疫細胞を体外で大幅に増やして、患者さんへ投与します。その結果、患者さんの体内に存在するその細胞は増えていくことになります。下の図は2014年に私たちが学術誌に掲載した論文から引用したものです。これは、アルファ・ベータT細胞療法を受ける前と、受けた後、2週間後での血中のT細胞数を各症例ごとで比較したものになります。この図から、2週間後でも増加したT細胞は保たれていることがわかります。
論文②
図は、私たちが行った臨床研究の結果を掲載した学術論文のグラフです。
治療に使う細胞の中でもっとも多くの細胞を投与するのが、ガンマ・デルタT細胞療法です。ガンマ・デルタT細胞を投与すると、1回の投与でも体内のガンマ・デルタT細胞は大幅に増加するケースも少なくありません。
患者2、3,5においては、治療後、血中のガンマ・デルタT細胞が明らかに増加しています。その後、治療は行わず六ヶ月後まで血中のガンマ・デルタT細胞を測定していますが、細胞は減少することなく維持されています。この論文では六ヶ月後までを記載していますが、実際は年単位でも減少することなく維持されることも経験しています。つまり、治療を終了した後も、その細胞は体内でしっかりと持続して働いていくことになります。したがいまして、治療の作用、効果は決して一過性、一時的なものではないと言えます。
今回はここまでとなります。次回は、他の研究者の学術論文も紹介し、抗がん剤の作用時間と比較しながらご説明させていただきます。
◆院長ブログバックナンバー
-がん治療の効果の矛盾―②
-がん治療の効果の矛盾―①
-SNSと論文 ―科学的な情報発信―
-韓国での免疫細胞治療の現況報告②