韓国での免疫細胞治療の現況報告②
院長ブログ
前回、韓国ソウルで開催されたがん免疫療法のシンポジウムへ参加してきたブログ『韓国での免疫細胞治療の現況報告①』を書きました。今回はその続きとして、日本と韓国の免疫細胞治療の法制度の違いを書いてみたいと思います。
日本では免疫細胞治療は再生細胞治療の1つとして法制度が整備されています。「再生医療等安全性確保法」の下で自由診療や研究として医療の中で行われ、一方、「薬機法;医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の下で再生医療等製品という医薬品として開発されています。韓国では後者のみです。シンポジウムでもこの点が議論されました。
私は、細胞治療は通常の大量生産される医薬品とは別物であり、前者の制度で行われる方が良いと考えています。すなわち、日進月歩で進歩する細胞治療技術をいち早く患者さんへ届けることができるのは前者の制度です。もちろん、その分、安全性に対する極めて慎重な配慮と医療に対する高度な倫理観が必須です。後者の場合は承認され患者さんのもとへ届くまでにとてつもない長い年月と開発費用が必要です。Immuncell-LCⓇ、アルファ・ベータT細胞療法は基盤的な治療としてわたしたちも現在も頻繁に使っている重要な治療法です。
しかし、既に30年前から使われている治療技術です。その後、現在に至るまでに樹状細胞ワクチン、NKT細胞療法、NK細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法などなど、様々な細胞治療法が登場し、現在、治療に用いられています。
現在、使用されている抗がん剤は、プラチナ系(シスプラチン、カルボプラチンなど)は1980年代、微小管阻害剤(パクリタキセル、ドセタキセルなど)やトポイソメラーゼ阻害剤(イリノテカン、エトポシドなど)は1990年代に承認された薬です。開発がはじまったのは承認からさらに十年以上前となります。医薬品は患者さんのところへ届くまでには途方もない年月がかかっているわけです。
2回に渡ってお伝えしてきた、韓国ソウルでのがん免疫療法のシンポジウム報告は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
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