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体外受精と樹状細胞ワクチン
院長ブログ

2022年4月26日

先進的な不妊治療の1つである体外受精が2022年4月から保険適用されたというニュースが流れています。
保険適用の詳しい内容はこちら→

不妊治療については、原因が明らかでその治療法が確立しているものについては、保険適用の対象としていましたが、一方で人工授精、体外受精や顕微授精等については、保険適用の対象としていませんでした。

人工授精とは精子を子宮内へ人工的に注入して、授精を促します。体外受精は受精までを体外で確実に行ってしまうことで妊娠させようとします。体外で受精を行うには、女性から取り出した卵子に精子を振りかけて受精卵を作成する方法から、精子を顕微鏡下で卵子に人工的に注入する顕微授精なども行われ、出来上がった受精卵の培養や凍結保存が行われます。これにより、従来の不妊治療では妊娠できなかった大勢の夫婦が妊娠できるようになりました。

体外受精は日本では1983年から行われていますので、40年近く自由診療で行われてきたことになります。体外受精は1回の治療費が平均、50万円ほどで、それを何回も繰り返し受ける場合も多く、不妊に悩む若い夫婦には大変な負担になっていました。保険承認されることは大きな福音です。

今回のブログのテーマは「体外受精と樹状細胞ワクチン」ですが、いったい、「樹状細胞ワクチンのどこが体外受精と関係があるのか?」と思われる方が多いと思います。

樹状細胞ワクチン、体外受精に共通したことは、どちらも体外で細胞を処理、操作することにより、体内で生じることを体外で確実にやってしまうということです。樹状細胞ワクチンの場合、どのような操作をするかと言えば、血液中の単球という細胞を体外で培養して大量の樹状細胞を作ります。その上で免疫の標的となる抗原を樹状細胞に取り込ませて、その細胞を注射します。がん治療の場合では、抗原はがん抗原でオンコアンチゲン、ネオアンチゲンという2種類があります。もちろん、がん抗原に限らず、たとえば、新型コロナウイルスの抗原を取り込ませれば、新型コロナウイルス用の樹状細胞ワクチンということになります。
一方、これらのがん抗原や新型コロナウイルスの抗原は樹状細胞を使わなくとも、そのまま、注射することでもワクチンとして働きます。新型コロナウイルスの場合、抗原としてはタンパクを用いる場合と、タンパクの元となるDNA、RNAを使ったワクチンがあります。アストラゼネカ社、ファイザー社、モデルナ社製ワクチンが普及、広く使用されています。がん抗原に関しても臨床試験が行われています。実はRNAワクチンなどは、新型コロナウイルスワクチンとして応用されるずっと前から、がんの免疫療法として研究開発されていました。また、がん抗原のタンパクの断片を使ったペプチドワクチンもがん治療として臨床試験が行われています。ただし、これらのワクチンはそのままで免疫応答を誘導するわけではなく、注射され体内に入った後に、樹状細胞などの細胞に取り込まれて処理されないと効果を発揮できません。

樹状細胞に取り込まれ処理されるまでを、体外で人為的に確実にやってしまうものが樹状細胞ワクチンです。単にワクチンだけを注射しても、それが体内でうまく樹状細胞に取り込まれて処理されるかはわかりません。そこまでの過程を体外で確実に行った上で、細胞を注射することで、より効果を確実に引き出そうとするものです。

細胞治療は今後、様々な医療に広く応用されていくと思われます。

なお、樹状細胞ワクチン、体外受精は、長年、自由診療として行われてきたところも共通ですが、樹状細胞ワクチンも体外受精のように保険承認して欲しいという意図では、まったくありません。

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