がん患者様の悩み
臨床心理士コラム④
こんにちは、臨床心理士・公認心理師 姜英愛(カンヨンエ)です。
当院では、患者様の治療の一助としてカンセリングの場をご用意しております。
本日は、がん患者様の悩みについてお話したいと思います。
患者様とお会いしていると、「ほかの患者さんはどういう悩みを相談しているのですか」と聞かれることがあります。私がお会いしてきた500人以上の患者様によりますと主に、①治療の選択について、②治療やご病気に対する不安、③ご家族に関わること、④仕事や社会的活動との両立、が主な内容となっています。私は心理的な側面の支援をする者ですので、治療に関わることについては治療そのものではなく、副作用など治療によって起きうるご自身の生活への影響を考えながら治療を選択するお手伝いをさせて頂いております。
では、広く日本のがん患者様を対象にした場合、皆さんはどのようなことを悩んでらっしゃるのでしょうか?
2013年に行われたがん患者様を対象とした実態調査報告書によると、「診察の悩み(診断・治療についてなど)」、「身体の苦痛(症状・副作用・後遺症など)」、「こころの苦悩(不安など)」、「暮らしの負担(就労・経済的負担・家族や周囲の人との人間関係)」が4つの柱となっており、当院の患者様がお話しされることとほぼ同じであることがわかります。この報告書では、同様の調査が行われた2003年時の報告書内容との比較も行われ、その理由の分析もされています。
大変興味深いのは、この10年の間で「診察の悩み(診断・治療についてなど)」が増えたと言うことです。報告書ではこの結果の背景として、この間のがんの診断法・治療法の進歩を挙げています。そのおかげで患者様はご自分のがんに対するより詳しい説明を受け、より多くの治療選択が可能になりました。しかし前回のコラム『選択するということ』でお伝えしたように、多くの選択肢が必ずしも悩みを減らしてくれるとは限りません。
報告書では10代~80代にわたるあらゆる世代で、治療に対する情報収集や患者間の交流、体験談を求める方の割合が多くみられています。実際、当院でも患者様から「ほかの方はこういう時どうされているの?」というご質問を受けることが多くあります。当事者だからこそ、のご意見やアイデアがあります。私はその一部をまた別の患者様にお伝えすることで、患者様同士の「助け合い」の一助となればと思っております。当然ながら個人個人で「答え」は違うものですが、やはり同じがん患者様のお話からインスピレーションを得られる方が多くいらっしゃるようです。日々患者様から学ばせて頂いていることの一部を、ささやかながら還元することが出来れば幸いです。
参考文献
1「がんの社会学」に関する合同研究班:2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書
2「がんの社会学」に関する合同研究班:がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書 概要版
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