免疫細胞治療とオプジーボ® #②
院長ブログ
前回の「免疫細胞治療とオプジーボ®」では、瀬田クリニック東京で併用の安全性試験を行ったことまでを書きました。今回はその続きを書きます。
前回、がん細胞を免疫作用により殺傷するには、樹状細胞によるT細胞への抗原提示、T細胞によるがん細胞の殺傷、がん細胞の防御機構である免疫チェックポイントの解除という3つの過程が必要であることをお話ししました。これを達成するためには、免疫細胞治療とオプジーボ®などの免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、1つの道が開かれるかもしれないと考えられます。
当院で行っている免疫細胞治療に関しては、患者さんご自身の免疫細胞を遺伝子操作などの人工的な操作をせずに、自然な方法で培養、活性化し、治療に使うことから副作用は理論的にも経験的にも軽微です。しかし、オプジーボ®は合成したお薬で、もともと生命にとって必要なPD-1という分子を阻害するわけですから、それなりの副作用は覚悟しなければなりません。おおよそ10%の患者さんにgrade3とされる重症な副作用が発生します。そのお薬に免疫細胞治療を併用した場合、オプジーボ®の副作用を増強してしまわないかという大きな問題があります。効果の期待はあるものの、副作用については慎重な配慮が必要です。
そこでわれわれは極少量のオプジーボ®を併用し、安全性を確認することからはじめることにしました。
瀬田クリニック東京では「免疫細胞療法と免疫チェックポイント阻害薬併用の安全性に関する探索的臨床研究」を2017年に開始しました。
免疫細胞治療に併用するオプジーボ®の量は0.3mg/kgと50kgの人ならば僅か15mgです。オプジーボ®は現在、患者さんの体重にかかわらず1回当たり240mgから480mgが点滴で投与されています。15mgは微量過ぎて、「副作用の心配も少ないかもしれないが、効果もない」という医師、研究者もいらっしゃいましたが、私たちは、オプジーボ®の基礎実験のデータからは、まったく作用がない量ではないと判断しました。
免疫細胞治療(アルファ・ベータT細胞療法)と少量(0.3mg/kg)のオプジーボ®の組み合わせを4回、行う臨床試験です。その結果、重症な副作用はなく安全に行うことが可能でした。
瀬田クリニック東京では現在、「有効性に関する探索的臨床研究」を実施しています。
もちろん、重症な副作用がなかっただけではなく、有効性もあります。
次回は極少量のオプジーボ®と免疫細胞治療の併用による有効例についての報告をしたいと思います。
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