新型コロナウイルス感染と免疫不全
院長ブログ
がん患者さんにおいて免疫機能が低下あるいは障害されていることは古くから知られています。がんという病気に罹患することによって免疫の障害が生じるとともに、化学療法および放射線治療などの治療によっても障害を受けます。
瀬田クリニックではがん免疫療法を専門とする立場からも、がん患者さんにおける免疫機能の研究を続けて参りました。
既に2014年に健常人およびがん患者さんの血液中の免疫細胞を詳細に分析した結果を報告しています。
【参考】進行がん患者で評価された細胞性免疫状態の障害と不均衡、および養子T細胞免疫療法(アルファ・ベータT細胞療法)によるT細胞免疫状態の回復
瀬田クリニックホームページ内の論文紹介ページNo.44でも同様の論文を報告しています。
がん患者さんにおいて細胞免疫の状態が障害されていること、免疫細胞治療(アルファ・ベータT細胞療法)によりその障害から回復できることがわかりました。
がん細胞に対する免疫応答と同様にウイルスに対してもT細胞が関与する細胞免疫が重要です。したがって、細胞免疫を強化するアルファ・ベータT細胞療法がウイルスへの免疫も強化すると考えられます。
これまで22年間免疫細胞治療を行ってきましたが、その間、治療を受けている患者さんでインフルエンザに罹患した方は極めて稀でした。がん患者さんですから、化学療法を受けて白血球減少をきたしている方も少なくないにもかかわらずです。家族中がインフルエンザにかかったが、自分はかからなかったとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。また、風邪をぜんぜんひかなくなったという声もよく聞きます。これはがんを煩っている方々は感染症への警戒感から人混みを避けるなど、罹患しにくい環境で生活を送っているためかもしれません。
免疫細胞治療がウイルス感染症を予防できるかどうかを実際に証明するには無作為化比較試験などを行わなければなりません。もちろん、そんなことを行うのは現実的にはほとんど不可能です。
なお、当院の患者さんで新型コロナウイルスに感染した方は2名いらっしゃいますが、いずれの方も極めて軽症で、治癒しています。80歳代というご高齢でがんを煩い、肺にも病気をお持ちで、さらには糖尿病などの持病を持っているにもかかわらず軽症で済んでいます。
新型コロナウイルスのワクチンについて、免疫不全者は効果が少なく、4回の接種が推奨されているとされています。
この記事では、米疾病対策センター(CDC)が新型コロナウイルスワクチンに関するガイドラインを改訂し、がん治療などで中程度から重度の免疫不全の症状がある人について、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンの4回目の接種を受けることになるかもしれない、米ジョンズ・ホプキンス大学がこの夏に実施した調査では、ワクチンを接種した免疫不全者は、それ以外の人と比べて入院や死亡の確率が485倍に上ることが判明したとされています。
今後、がん、感染症における免疫の重要性がさらに注目されていくと思われます。
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