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新たな選択肢として注目される光免疫療法とは?
瀬田クリニック東京 コンシェルジュスタッフブログ

投稿日:2021年4月21日

更新日:2024年11月20日

新たながん治療法として注目を集めているのが、光免疫療法です。

免疫療法というカテゴリで、当院にも『光免疫療法』についてのお問い合わせをいただくことも多いですが、『光免疫療法』という言葉を初めて聞いた人も多いかもしれません。光免疫療法とは、どのような治療なのでしょうか。

本記事では、光免疫療法の概要や仕組み、治療の流れやメリット・デメリットをご紹介します。

光免疫療法とは?

『光免疫療法』は、IR700という光感受性物質を結合させたがん細胞にレーザー光をあて、がん細胞を破壊する治療法です。そしてこの治療に使用する医薬品「アキャルックス」※は、2020年9月25日に日本の厚生労働省が頭頚部がん患者に対する治療薬として薬事承認しました。これにより、頭頚部がんで『光免疫療法』の対象となる患者さまは、国民皆保険制度を利用し治療が受けられます。

※「アキャルックス」は、米国立衛生研究所主任研究員の小林久隆先生と楽天メディカルジャパンが開発されました。そして、世界に先駆けて日本で申請を目指す画期的な新薬として特別な制度の対象となり、早期の承認にいたりました。

光免疫療法の仕組み

家族を守る免疫入門(著:後藤重則)』から
第4章「がんを撃退する免疫療法の最前線」より参照

アキャルックスを点滴すると、IR700ががん細胞だけに結合します。その後、専用の装置でレーザー光をがん病巣部位に当てると、がん細胞の細胞膜が壊れ、破裂します。光をあてた部位に限局する局所的な治療です。

光免疫療法と放射線治療の違い

ここまで聞くと、みなさまの中には「放射線治療と何が違うの?」「なぜ、免疫療法といわれるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。実はこの疑問点こそ、『光免疫療法』を理解する上で重要なポイントです。

『光免疫療法』は光を表面から当てるので、放射線のように深部の病巣まで届くわけではなく、その点では放射線治療の方にメリットがあります。また、放射線はがん細胞だけでなく、がん細胞の周囲に存在する、がん細胞への攻撃を行っている細胞も一緒に破壊されてしまうことになります。

『光免疫療法』は、がん細胞の周囲の免疫細胞を破壊することなく、がん細胞だけを破壊し、そして、破壊されたがん細胞のかけらは、元気ながん細胞よりももっと効率的に樹状細胞が取り込み、免疫の攻撃をより効率的に引き出せることです。免疫の攻撃が効率よく起これば、光をあてていない転移したがんにも効果が及ぶことが期待できます。ただ、この点はこれから検証していくことが必要です。

がん細胞への免疫の攻撃は、樹状細胞からの指令に基づいたT細胞の攻撃、この攻撃に対してがん細胞は免疫チェックポイントにより守る、という一連の過程があります。
これまでもそれぞれに対応した免疫療法が行われていますが、今後は免疫細胞治療、光免疫療法、免疫チェックポイント阻害薬などと組み合わせた複合的免疫療法が大きな成果につながるかもしれません。

なお、光免疫療法という名称は、このアキャルックスを使った治療とはまったく別な治療でも用いられているようですので、間違わないようにご注意ください。

光免疫療法を受ける3つのメリット

光免疫療法を受ける3つのメリットをご紹介します。

正常な細胞への影響を抑えられる

光免疫療法を受けるメリットの一つは、正常な細胞への影響を避けられることです。

がん治療として一般的に用いられる手術療法や放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)は、がん細胞を攻撃するだけでなく、正常な細胞も攻撃してしまいます。

しかし光免疫療法の場合、がん細胞だけを狙って攻撃するため、正常な細胞がダメージを受けにくいとされています。

従来の治療法と比べて副作用が少ない

従来の治療法と比べて副作用が少ないことも、光免疫療法のメリットです。

従来の手術療法や放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)は、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため、副作用を引き起こしやすい傾向にありました。

正常な細胞が受けるダメージをできる限り抑えられる光免疫療法なら、副作用のリスクを軽減して治療が進められます。ただし、どのような治療で副作用が出るかは体質によって個人差があるため、人によっては光免疫療法で副作用が出てしまうかもしれません。

治療部位以外のがんにも効果を期待できる

治療部位以外のがんにも効果を期待できることも、光免疫療法のメリットです。

光免疫療法は、がん細胞に対する免疫を高める効果もあるとされる治療法です。レーザーを照射してがん細胞を破壊すると、がん抗原と呼ばれる物質が周囲に飛び散ります。周辺の細胞は光免疫療法によるダメージを受けていないため、がん抗原を取り込んで、治療部位のがん細胞と同じ性質を持つ細胞を攻撃するようになるでしょう。

この仕組みにより、破壊したがん細胞と同じがん細胞への免疫が活性化されるため、治療部位以外のがんにも効果が期待できる可能性があります。

光免疫療法を受ける3つのデメリット・注意点

光免疫療法を検討しているのなら、デメリット・注意点についても把握しておきましょう。3つのデメリット・注意点をご紹介します。

治療対象となるがんの種類が限られている

光免疫療法は、治療対象となるがんの種類が限られています。

光免疫療法は、レーザーを照射することで、がん細胞にアプローチする治療です。深部にあるがんには皮下に針を刺すことで対応できます。しかし、針を刺しても届かない深さにあるがんには効果が期待できません。

保険適用外となる場合がある

保険適用外となる場合があることも、光免疫療法のデメリットです。

現在光免疫療法の保険適用は、頭頸部がんのみにしか認められていません(2024年8月現在)。また頭頸部がんの場合でも、「切除不能な局所進行または局所再発」のみが適応となっているため、医師の判断によっては保険が適用にならないこともあります(※)。

※参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター.「がん光免疫療法全般に関する Q&A」p1.
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2024/rakutenQA_20240828.pdf,(参照 2024-09-04).

治療後は直射日光を避けた生活が必要

光免疫療法を受けると、治療後は直射日光を避けた生活をする必要があります。

光免疫療法で用いるアキャルックスは、光に反応する薬剤です。治療後に直射日光を浴びてしまうと、光線過敏症を引き起こす恐れがあるため、一定期間は直射日光を避けなければなりません。

一般的に、レーザーの照射後は1週間程度の入院が必要です。

また、退院しても光線過敏症を発症するリスクはゼロではありません。できるだけ外出を控え、外出する際は夏でも長袖を着用したり、帽子やサングラスなどを使用したりする必要があります。

光免疫療法は新しいがん治療として注目されている

光免疫療法の概要や仕組み、治療の流れやメリット・デメリットをご紹介しました。

光免疫療法は、正常ながん細胞への影響を抑え、治療箇所以外のがんにも効果が期待できる新しいがん治療法です。

がん治療の選択肢を増やしたい方は、光免疫療法も検討してみてはいかがでしょうか。

瀬田クリニック東京は1999年から、患者さまのがん細胞の性質・特徴を調べ、個別化医療として一人ひとりにあったがん免疫細胞療法の治療を専門医療機関として行っております。治療についてのご相談や不安、疑問などございましたら、下記フォームよりお問い合わせください。

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