『選択するということ』について
臨床心理士コラム②/臨床心理士:姜 英愛
みなさま、こんにちは。臨床心理士の姜です。
前回、私の役割『臨床心理士によるメンタルヘルスケア』についてお伝えした際、患者さんは限られた時間内に、さまざまな選択をしなければならなくなる、ということに触れたかと思います。
もちろん一番多い話題は「治療の選択」です。
本日は、選択肢の治療内容のことではなく、「選択する」ということについてお伝えしたいと思います。
「選択のパラドックス」という考え方があります。
米国スワースモア大学のバリーシュワルツ博士は、「ひとは選択肢が少なすぎても不満だけれど、多すぎても満足することが難しい」ということを実験を通して提言しました。
選択肢が多すぎると、選択することが難しく、そのため選択すること自体をやめてしまったり、あるいは選択してもその結果に対する満足度が低くなる、というのです。
このことを、がん患者さんに当てはめてみると、治療について主治医から説明を受けたり、自分でも調べてみたり、周囲の方々から情報を頂いたり、と情報はたくさん得られたけれど、果たしてどれを選択したらいいのか、迷われる場面が想定されます。さらに、がん患者さんの大変さは、選択肢である治療法について医学的な専門知識が不足するために、選ぼうにも選べない思いがあるところです。
ある方は、選択することを他の人に任せる(主治医や家族)方法をとられるでしょう。
またある方は、ひとつひとつ調べて、医師に疑問点を質問して、ご自分で最大限理解する努力をされるでしょう。
一方である方は、そのようなプロセスを経る時間的余裕もなく、決められた治療がすぐに始まってしまうこともあるでしょう。
がん患者さんにとって、どれがよいのでしょうか。
長年、がん患者さんとおつきあいさせていただいた心理士の立場から申し上げると、
どれも正解となりうるようです。
良い意味で、がんとの付き合いはそれなりの月日を要します。
カウンセリングでは、ご自分なりのお答えを探すお手伝いを行っています。