Vol.4 最初はお兄さんの治療から
そのような研究を続けていたある日、実のお兄さんが前立腺がんを発症したという知らせが舞い込みました。一旦手術が成功し落ち着いていたものの、転移が発覚し、かなり重篤な状態になり、既存の治療法がすべて効かなくなっていきました。
兄に免疫細胞治療を受けさせることはできないかと考え、知り合いの医師のクリニックの協力を得て免疫細胞治療を行うことになりました。
結果としては、残念ながら当時はまだまだ治療技術も不十分だったためか、8カ月後、劇的に効いたという実感はないまま、お兄さんは亡くなってしまいました。
しかし、亡くなる直前まで会社役員の激務をこなし、油絵を楽しみ、充実した最期を送っていたように、弟である江川先生の目には見えました。治療中、腫瘍マーカーの上昇速度も緩やかになっていたことは確認できました。
このような結果について、どれだけ免疫細胞治療が貢献できたのかはわかりません。しかし、少なくとも、免疫細胞治療ではなく通常の治療を続けていたら、こうはならなかっただろうな…とも江川先生には思えました。
この治療法は決して悪くないのではないか。
まだまだ発展途上だが、治療の科学的根拠も十分に理解できる治療であるし、もっともっと工夫して良いものを生み出していきたい。
そんな欲求が、江川先生の中で湧き上がってきました。