CAR-T細胞とは、遺伝子改変によりCAR(キメラ抗原受容体)を発現させたT細胞のことです。なおCARは、特異的にがん抗原を認識するよう改変した特殊なタンパク質を指します。
CAR-T細胞療法は、患者さん自身の免疫機能を高めてがん細胞を排除する免疫療法です。ただし、CAR-T細胞療法の対象となるのは白血病などの一部の血液がんで、副作用が起こる可能性もあります。
本記事では個別化医療の一つであるCAR-T細胞療法について、基礎的な知識を解説するとともに、メリット・デメリットなども紹介します。
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CAR-T細胞の基礎知識を解説
CAR-T細胞は「キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞」の略称です。
T細胞は、白血球のうちリンパ球に分類される細胞です。リンパ球には主にT細胞、B細胞、NK細胞の3種類があります。そのうちT細胞はがん細胞を攻撃する性質があり、免疫療法で重要な役割を担います。
T細胞とCAR-T細胞の違いは、がん細胞に対する攻撃力です。
T細胞は、細胞表面にあるT細胞受容体でがん抗原を認識して攻撃します。しかし、がん細胞の中には、がん抗原を隠して免疫細胞から逃れたり、免疫抑制物質を出してT細胞の働きを弱めたりするすべを持つものがいて、T細胞では完全に排除し切れないことがあります。
一方、CAR-T細胞はがん抗原を認識しやすく、高い攻撃力を持つ点が特徴です。そのため、これまで治療法がなかった白血病などの難治性の血液がんにも治療効果が期待できます。
CAR-T細胞療法は新たながん免疫療法
CAR-T細胞免疫療法は、国内では2019年に認可された、比較的新しい免疫療法です。またCAR-T細胞免疫療法は、がんの種類や特徴に合わせて、患者さん一人ひとりに適した治療を行う個別化医療の一つです。
ここでは、CAR‐T細胞療法の仕組みや副作用を解説します。
1. CAR-T細胞療法の仕組み
CAR-T細胞療法とは、患者さんのT細胞にCARを遺伝子導入して、遺伝子改変により作製したCAR‐T細胞を患者さんの体内に戻す免疫療法です。
CAR‐T細胞は通常のT細胞よりもがん抗原を認識しやすく、高い攻撃力を持ちます。このことからCAR-T細胞療法は、通常の免疫機能では治療が難しいがんに対して開発されました。
CAR‐T細胞療法の流れを解説します。
- 治療施設で専用の機械を用いて、患者さんの血液からリンパ球を採取する
- CAR-T細胞製造施設で、リンパ球の選別、CAR遺伝子の導入、CAR-T細胞の培養と増殖、品質検査を行う
- CAR-T細胞を投与する準備が整ったら、患者さんは投与の数日前から治療施設に入院し、リンパ球除去化学療法を行う(体内のリンパ球を減らすことで、CAR-T細胞が体内で増えやすくなり、治療効果を高める効果が期待できる)
- CAR-T細胞を投与する
CAR-T細胞製造施設での工程は数週間かかるため、準備が整うまで抗がん剤治療や放射線療法を行うことがあります。
CAR-T細胞投与後は副作用が起こる可能性があり、投与後1カ月程度入院が必要です。入院期間は経過により前後する可能性があります。
2. CAR-T細胞療法の副作用
免疫療法は、患者さん自身の免疫を利用するため抗がん剤治療や放射線治療と比べ体への負担や副作用の少ない治療法とされています。しかし副作用が全く起こらないわけではありません。CAR-T細胞療法で懸念される副作用にはサイトカイン放出症候群があります。サイトカイン放出症候群は、炎症性サイトカインが大量に放出されることで起こる不調です。
サイトカインは免疫細胞から分泌されるタンパク質で、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインがあり、免疫細胞のバランスを保つ役割をしています。
炎症性サイトカインは免疫を活性化させる働きがあり、風邪のような感染症でも産生される物質です。この炎症性サイトカインに対し、通常は過剰な免疫反応を抑えるため、抗炎症性サイトカインが炎症を抑制しバランスを取ります。
しかしCAR-T細胞療法では、CAR-T細胞の投与により急速に免疫機能が高まるため、炎症性サイトカインが大量に放出されることがあり、サイトカイン放出症候群になる恐れがあります。
サイトカイン放出症候群の初期症状は発熱や悪心、頭痛、倦怠感、筋肉痛などです。重症になると高熱や血圧低下、呼吸困難・頻脈などが起こる恐れがあります。
症状は多くの場合、CAR-T細胞投与から14日以内に発生しますが、がん細胞の残存状況やCAR-T細胞の種類により、発生のタイミングに差が生じることがあります。
サイトカイン放出症候群の主な治療法は、解熱薬の投与や炎症性サイトカインの機能を抑制する薬の投与です。改善が見られない場合は、副腎皮質ステロイドホルモンの投与が検討されることもあります。
CAR-T細胞療法のメリットとデメリット
CAR-T細胞療法のメリットは次の通りです。
- がん抗原の特異性が高い
- 副作用が少ない
CAR-T細胞はがん細胞の抗原を特異的に認識して攻撃します。そのため、抗がん剤治療や放射線治療と比べて副作用が少ない傾向があります。
CAR-T細胞療法のデメリットは次の通りです。
- 治療対象となるがんが一部の血液がんに限られる
- CAR-T細胞が作れないことがある
- がんが急速に進行している場合は行えない
- 費用が高額
現在、CAR‐T細胞療法は血液がんに対してのみ有効性が示されています。そのため、対象となるがんは難治性の白血病やリンパ腫です。
しかしCAR‐T細胞療法の対象となる血液がんでも患者さん自身のリンパ球が少なかったり、CAR-T細胞の培養と増殖ができなかったりしてCAR-T細胞の作製が困難なケースがあります。
また、CAR-T細胞の作製には数週間かかるため、急速にがんが進行している場合は対象外となる可能性があり、ある程度病態が安定していることが重要です。
CAR-T細胞は個別化医療です。患者さんごとにCAR-T細胞を作製しなければならないため、コストが高く治療費が高額になります。なお、CAR-T細胞の投与にかかる費用は施設や地域によって異なり、その他採血、レントゲン撮影といった検査費用や管理費用も加わります。保険適用の場合は高額療養費制度の自己負担限度額までの支払いになりますが、リンパ球の採取と投与には入院が必要です。そのため、別途入院時食事療養費や差額ベッド代がかかる可能性があります。
CAR-T細胞療法は個別化医療の一つ
CAR-T細胞療法とは、がん細胞を特異的に認識・攻撃する遺伝子を利用した個別化医療のことです。CAR-T細胞療法は、これまで治療法がなかった難治性の血液がんに対する効果が期待できます。
もちろん、がんは患者さんごとに性質が異なるため、誰にでも有効な治療法は存在しません。患者さんの病態やがんの特性に基づいた免疫治療の選択が重要です。
瀬田クリニック東京では、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提案する個別化医療を実施しています。まず、免疫状態を徹底的に検査した上で治療法をご提案。さらにがんの遺伝子を全て解析し、患者さん特有の遺伝子変異を特定して治療する、ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンも提供しています。免疫治療に興味のある方は、ぜひ瀬田クリニック東京へご相談ください。
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