がん治療中は、がんからの出血や抗がん剤治療で血中の酸素を運ぶ働きをするヘモグロビン濃度が低くなり、貧血になることがあります。貧血は適切な対処で改善が見込めますが、放置すると悪化する恐れがあるため早めの対処が重要です。本記事では、抗がん剤使用中に貧血になりやすい理由や貧血症状を解説するとともに、貧血時の対処法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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貧血は血中のヘモグロビン濃度が低い状態のこと
貧血は、血液の成分の一つである赤血球に含まれるヘモグロビン濃度が正常値よりも低下した状態のことです。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きをしています。貧血になると全身に十分な酸素がいき渡らず、めまいや動悸などの症状が起こります。
貧血は放置すると悪化する恐れがあるため、貧血を疑う症状があれば早めに対処することが大切です。貧血になる主な原因は次の2つです。
1. 鉄分の摂取不足
貧血で多いのは、鉄分不足が原因の鉄欠乏性貧血です。ヘモグロビンの合成には鉄分が必要ですが、食生活の乱れなどで、鉄分の摂取量が減るとヘモグロビン値が低下し貧血につながる恐れがあります。
2. 病気
がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸ポリープなど腫瘍や潰瘍からの出血により血液が多く失われると、貧血につながることがあります。また病気が直接の原因でなくとも、がんの治療に使用する抗がん剤や放射線で、骨髄抑制や溶血が起こり貧血になるケースもあります。
がん治療中(抗がん剤使用中)の副作用として貧血が現れるメカニズム
前述の通り貧血は、血中のヘモグロビン濃度が低下し、全身に十分な酸素が運べなくなる状態です。がん治療において抗がん剤使用中には、副作用として貧血が現れることがあります。以下で、主な要因を解説します。
1. 血液を作る働きの低下
がんの標準治療として行われる抗がん剤や放射線を用いた治療は、骨髄抑制や溶血を起こすことがあり、貧血の原因になります。骨髄抑制は骨髄内の血液細胞を作る働きが低下することで、溶血は赤血球が壊れやすくなることです。
2. 食事量の低下
食欲不振は抗がん剤治療の副作用の一つです。抗がん剤はがん細胞を攻撃し増殖を防ぐ作用がありますが、正常な細胞も攻撃します。正常な細胞が傷付くことで吐き気、嘔吐、口内炎などの症状が現れ、食事量が減ると造血に必要な鉄分やタンパク質などの栄養素が不足し、貧血になることがあります。
がん治療中に抗がん剤の使用以外で貧血が起こる原因
がん治療中には、抗がん剤の使用以外でも貧血を起こすことがあります。
ここから、抗がん剤の使用以外が原因で起こる貧血の原因について解説いたします。
1. がんの症状として起こる貧血
がんの症状として貧血が起こる主な原因は出血です。がん細胞がある部分は粘膜がもろく、血管が破れやすいため出血する可能性があります。がんが進行して周囲の組織に浸潤し、がん細胞が血管に食い込むと慢性的な出血が続くため、貧血につながります。また白血病や悪性リンパ腫など血液のがんで貧血になるのは、骨髄の機能が抑制され、赤血球をうまく作れなくなることが原因です。
2. 胃がん手術後の胃の機能低下
胃がん手術で胃を切除すると、造血に必要な鉄分やビタミンB12が体内に吸収されにくくなります。特に術後は、鉄欠乏性貧血になりやすいため注意が必要でしょう。ビタミンB12に関しては、数年は体内の蓄積分で補えます。蓄積されたビタミンB12が喪失するのは、術後4〜5年以降といわれており、ビタミンB12が不足すると巨赤芽球性貧血を発症する恐れがあります。ビタミンB12の不足は血液検査で確認できるので、胃がん手術後は定期的に血液検査を行い、ビタミンB12が不足していれば注射で補うことが大切です。
貧血になると起こる主な症状
貧血になると全身に十分な酸素を送れなくなるため、さまざまな症状が起こります。
貧血の判断基準はヘモグロビン値が男性13g/dl以下、女性11g/dl以下です。貧血症状には個人差がありますが、ここでは軽度・中度・重度に分け、それぞれで起こり得る症状を解説します。
1. 軽度の貧血
血中のヘモグロビン値が10〜12g/dlの場合、軽度貧血と判断されます。主な症状は以下の通りです。
- 顔色が悪くなる
- まぶたの裏が白くなる
- 口の中の赤みが減る など
軽度貧血の場合、ヘモグロビン値が正常値の70%以下になります。自覚症状は少なく、顔色の悪さを他者から指摘されて気付くことがあります。
2. 中度の貧血
血中のヘモグロビン値が7〜9g/dlの場合、中度貧血と判断されます。主な症状は以下の通りです。
- 脈が速くなる
- 息切れ
- 喉のかわき
- 発汗 など
中度の貧血は、ヘモグロビン値が正常値の59%以下になります。全身に十分な酸素をいき渡らせるには多くの血液を送る必要があり、心拍数が増加します。
3. 重度の貧血
血中のヘモグロビン値が4〜6g/dlの場合、重度貧血と判断されます。主な症状は以下の通りです。
- めまい
- 耳鳴り
- 倦怠感
- 頭痛
- 集中力の低下
- 不眠
- 異食症
- 舌炎や口角炎
- スプーン状爪
- 低体温
- むくみ
- 食べ物が飲み込みにくくなる など
重度の貧血はヘモグロビン値が正常値の40%以下になります。脳や抹消細胞への酸素供給が低下するため、全身にさまざまな症状が現れます。
抗がん剤による貧血の起こる時期
赤血球の寿命は120日と長いため、抗がん剤を使用してもすぐに貧血症状が出るわけではありません(※)。貧血症状は抗がん剤の使用後1〜2週間経過してから徐々に現れ始めます。抗がん剤による副作用のため、抗がん剤治療終了後には赤血球の数は正常値に戻ることが多いです。
しかし、飲み薬の抗がん剤は3〜4週間を1サイクルとして4〜6回繰り返し、点滴や注射の抗がん剤は投薬期間と休薬期間を1サイクルとし、医師の判断で数回繰り返します。抗がん剤治療の間は貧血症状が続く可能性があり、貧血の度合いにより治療が必要となることがあります。
※参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「赤血球」.
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/sekkekkyu.html,(参照 2024-09-26).
がん治療中の貧血対策
がん治療中に自分でできる貧血対策は食事の見直しです。貧血対策のために積極的に摂取したい栄養を紹介します。
1. 鉄分を多く含む食事をする
鉄分はヘモグロビンの合成に欠かせない栄養素ですが、体内での吸収率が低いという特徴があります。鉄分の吸収率は肉や魚など動物性食品に含まれるヘム鉄が15〜25%、野菜や穀類など植物性食品に含まれる非ヘム鉄は2〜5%しかありません。鉄分を多く含む食材を積極的に摂取することが大切です。鉄分を多く含む食品には、レバーやカキ、カツオ、ほうれん草、ひじき、シジミ、プルーン、レーズンなどがあります。
2. 貧血対策には鉄分以外にも必要な栄養素がある
ヘモグロビンの合成には鉄分だけでなく、タンパク質、ビタミンC、ビタミンB12、葉酸などの栄養素も必要です。タンパク質はヘモグロビンの合成に必要な栄養素です。鉄分を十分に摂取していても、タンパク質が不足するとヘモグロビンがうまく合成されず、貧血を起こしやすくなります。
タンパク質を多く含む食品は肉や魚、乳製品・大豆製品などです。ビタミンCは鉄分の吸収を高める効果があります。鉄分は吸収率が低いため、ビタミンCと同時に摂取するようにしましょう。ビタミンCを多く含む食品にはブロッコリーや小松菜、キャベツ、キウイフルーツ、オレンジ、レモンなどがあります。
ビタミンB12や葉酸は、赤血球の形成や成熟、DNAの合成に必要な栄養素です。ビタミンB12を多く含む食品にはブロッコリーやほうれん草、アスパラガス、玉ねぎ、バナナなどがあります。葉酸を多く含む食品にはブロッコリー、芽キャベツ、ほうれん草などがあります。
3. 食欲不振のときは食事を工夫する
抗がん剤使用中は吐き気、味覚変化、口内炎などの副作用で食欲不振になることがあります。食事量が減れば摂取する栄養素の量も減るため、貧血になりやすくなります。
しかし、食欲がないときに無理に食べるのは嘔吐やストレスの原因にもなるため、1回当たりの食べる量を減らしつつ、食べる回数を増やして必要な栄養素を取ることが大切です。少量で多くの栄養を補える栄養補助食品を取り入れるのも良いでしょう。栄養補助食品にはゼリーや液状、アイスなどさまざまな種類があります。自分の食べやすい物を取り入れてください。
貧血症状が現れたときの対処法
貧血の症状が現れたときには、安静にすることが重要です。ここでは、自分でできる対処法を解説します。
1. めまいや立ちくらみが起きたときはその場にしゃがむ
めまいや立ちくらみが起きたときは、その場にしゃがむようにしてください。立ったままでいたり、無理に動いたりすると転倒する恐れがあります。抗がん剤治療中は、ヘモグロビンだけでなく、血小板が少なくなることもあります。
血小板は出血を止める役割がある成分のため、血小板が少ない状態でけがをすると出血が止まらない可能性があり危険です。
2. 休息を取る
貧血になると疲れや倦怠を感じやすくなります。日中は小まめに休息を取り、疲れを感じたときは無理せず楽な姿勢で体を休めましょう。
3. 手洗いやうがいをする
貧血になると全身に十分な酸素と栄養素を送れなくなるので、免疫機能が低下しやすいです。手洗いやうがいを念入りに行い、感染症対策をしましょう。
4. 医師に相談する
貧血の症状が現れたら医師に相談してください。がんの治療中は、腫瘍からの出血や骨髄抑制、溶血、鉄分不足など、さまざまな原因で貧血になりやすいです。貧血の原因や程度に応じて適切な処置を受ける必要があります。貧血症状を正確に伝えられるよう、貧血が起きたときの具体的な様子をメモしておくことも大切です。
抗がん剤使用中に貧血になったときの治療法
抗がん剤使用中に貧血になったときは、原因に合わせた貧血治療を行うことが大切です。ここでは、原因別の治療法を解説します。
原因 | 治療法 |
---|---|
鉄分不足 | 鉄剤やビタミン剤を服用し、抗がん剤治療と並行して貧血の治療を行います。鉄剤を服用すると約6週間で貧血は改善されます。しかし、貧血が改善されてすぐに服用を止めると、再び貧血になる可能性があるため、医師の指示に従い服用を続けることが大切です。 |
がん細胞からの出血 | 止血剤の使用や手術で止血をします。 |
溶血 | ステロイド剤を用いて治療を行います。 |
抗がん剤の使用 | がん治療を続けるために、抗がん剤薬剤の変更や治療時期の変更を行うことがあります。 |
重度の貧血 | 輸血を行い症状の改善を図ることがあります。 |
何を起因とする貧血かによって治療法は異なります。原因を理解し、適切な治療を受けるようにしましょう。
免疫療法は新しいがんの治療法
がん治療は、手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療の3つが標準治療として行われており、三大治療と呼ばれています。免疫療法は、近年の医療技術の進歩で発展している治療法で、第4のがん治療法として注目を集めています。
免疫療法とがんの標準治療との違い
免疫療法と標準治療の違いは、がん細胞にダメージを与えるのが患者さんの内部にある力か、外部からの力かという点です。免疫療法の中でも、免疫細胞療法は患者さん自身の体の内部にある免疫細胞を採取後、培養・加工し、活性化させてから、患者さんの体内に戻す治療方法です。強化した患者さんの免疫機能でがん細胞を攻撃します。
一方、手術はがん細胞を物理的に除去する治療法、化学療法は抗がん剤でがん細胞を破壊する治療法、放射線治療はがん細胞のDNAにダメージを与えて破壊する治療法です。がん細胞への攻撃の仕方は異なりますが、どれも外部の力でがん細胞にダメージを与え治療します。
免疫療法の特徴
免疫療法は、これまでのがん治療とは異なり、自分の免疫機能を強化する治療法です。以下では、免疫療法の特徴を解説します。
1. 副作用が少ない
免疫療法は自分の免疫細胞を強化して使用するため、正常な細胞は攻撃せずがん細胞だけを攻撃します。そのため、抗がん剤治療よりも副作用が少ないことが特徴です。しかし免疫療法の中でも、免疫チェックポイント阻害剤は免疫療法特有の副作用が起こることがあります。主な副作用は以下の通りです。
- 発熱
- だるさ
- けいれん
- 皮膚のかゆみ
- 体重減少
- 発汗
- 不眠
- 頭痛
- めまい
- 喉の痛みや飲み込みにくさ
- 息切れ
- 動悸
- 吐き気
- 食欲不振 など
副作用が起こる時期や症状には個人差があり、治療開始後すぐに起こるケースや治療終了後、数週間から数カ月後に起こるケースがあります。体調に変化があれば医師に相談してください。
2. 全身に広がったがんの治療が可能
進行がんや転移したがんなど、手術が難しいケースであっても免疫療法であれば治療できる可能性があります。免疫療法では、強化された免疫細胞ががん細胞に狙いを定めて攻撃します。免疫療法は全身に作用するため、抗がん剤と同様に全身に広がったがんの治療にも適応します。
3. 効果が長期間続く
免疫療法は、免疫システムががん細胞を認識し反応能力を高めるまでに時間が必要です。抗がん剤と比較すると効果が現れるまでに時間がかかる傾向がありますが、効果が現れた場合には、効果が長期間持続します。
免疫療法の主な治療法は6種類
免疫療法によるがん細胞への作用は、がん細胞を攻撃する機能を高める、攻撃を防ぐ要因を排除するなど、いくつかあります。以下で解説する6つは、免疫療法の主な治療法です。
1. 免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞のがん細胞への攻撃機能を保つ治療法です。免疫細胞には好中球やマクロファージ、リンパ球、NK細胞、形質細胞などがあります。がん細胞を攻撃する作用がある細胞は、リンパ球の中のT細胞です。T細胞には攻撃をするなという命令を受け取るアンテナがあり、がん細胞は攻撃から逃れるためT細胞に結合して攻撃をやめさせる命令を送ります。命令を受けるとT細胞の働きにブレーキがかかり、がん細胞を攻撃できなくなります。免疫チェックポイントとは、T細胞に攻撃のブレーキをかける仕組みのことです。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れるブレーキを阻害する作用があり、T細胞にがん細胞を攻撃し続けるように働きます。免疫チェックポイント阻害剤にはオプジーボ®やキイトルーダ®、テセントリク®、ヤーボイ®などがあります。
2. 免疫細胞治療
免疫を担う細胞を採取後、体外で増殖・強化してから体内に戻し、免疫の力でがんを攻撃する治療方法です。治療で使用する細胞には、T細胞やガンマ・デルタT細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞などがあります。
3. がんワクチン
がんワクチンは特定の免疫力を高めてがん細胞への攻撃を強化する治療法で、樹状細胞ワクチンは代表的ながんワクチンです。がん細胞はがん化の過程で遺伝子変異が生じ異常なタンパク分子を有しています。異常なタンパク分子はがん抗原となり、T細胞はがん抗原を目印にがん細胞を識別します。樹状細胞ワクチンは、まず体内にある樹状細胞の元となる細胞を取り出し、人工的に樹状細胞に成長させたものに目印となるがん抗原を覚えさせ体内に戻す治療法です。体内に戻された樹状細胞がT細胞にがん抗原を伝え、がん細胞を攻撃させます。
4. 抗体医薬
がんに対する抗体を投与する治療法です。抗体医薬ががん細胞の表面にある特有のタンパク質を認識して集まり、結合してがん細胞を排除する働きをします。抗体医薬にはハーセプチン®やアービタックス®、アバスチン®などがあります。
5. サイトカイン療法
サイトカインは免疫細胞から分泌されるタンパク質の総称で、免疫機能に大きく関係する物質です。サイトカイン療法は、サイトカインの免疫細胞を活性化させる働きを利用し、がん細胞への攻撃を助けます。サイトカイン療法で使用される製剤には、インターフェロンやインターロイキンなどがあります。
6. 免疫賦活剤
免疫賦活剤は、がん免疫を活性化する細菌製剤や担子菌から抽出したグルカンを主成分とした製剤を投与する治療法です。1970年代に注目された免疫療法で近年は衰退していますが、現在でもBCGやピシバニール®などは使われています。
免疫療法は一人ひとりに最適な個別化医療が重要
免疫療法は近年注目を集めており、新たな免疫療法も次々に登場しています。同じ部位のがんでも、がん細胞の性質は人により異なるため、病態に応じて最適な免疫療法を使い分けると良いでしょう。個別化医療を受けられる病院を探すことが重要です。
抗がん剤使用中の貧血を防ぐには症状や対策の理解が必要
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃するため、さまざまな副作用が起こります。貧血も副作用の一つであり、原因は多岐にわたります。いずれも治療が必要となるケースがあるため注意しましょう。
瀬田クリニック東京では、患者さんの免疫機能やがん細胞の免疫的特性を診断して、複数の免疫療法の中から、個別にもっとも適切なものを選択する個別化医療を行っています。そして、患者さんお一人おひとりにとって最適な治療法を見極め、提供しております。
また免疫療法は全身に作用しますが、がん細胞のみを攻撃し、正常な細胞は攻撃しないため副作用が少ない治療法です。がん治療の副作用がつらい患者さんやできるだけ体に負担をかけない治療を希望される患者さんは、ぜひ瀬田クリニック東京にご相談ください。
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