ガンマ・デルタT細胞などの免疫細胞が、がん細胞などを見つけて攻撃するには、その細胞が「がん細胞や異常な細胞である」ということを認識する必要があります。
実はがん細胞は「自分ががん細胞である」という特有の目印や「異常な細胞である」というシグナルを出していて、免疫細胞にはこれらの目印やシグナルを認識するための装置が付いています。免疫細胞はこの装置によってがん細胞の目印やシグナルを認識して攻撃をしかけます。
免疫細胞にはいくつかの種類があり、その種類によって目印やシグナルの認識方法が異なります。ガンマ・デルタT細胞は体内を絶えず巡回し、直接がん細胞や異常な細胞から出ているシグナルを認識し、迅速に攻撃をしかけます。
一方、がんワクチンなどに用いられるCTL(細胞傷害性T細胞)という免疫細胞は、樹状細胞からがんの目印を間接的に教えてもらうことで、がん細胞を見極めて攻撃するようになります。しかしがん細胞によってはこの目印を隠していることもあり、その場合CTLはがん細胞を認識できないため、攻撃することができません。
それに対して、ガンマ・デルタT細胞はこの目印とは別の異常な細胞全般に見られるシグナルを認識して攻撃をしかけます。そのため、ガンマ・デルタT細胞療法は目印が消えているがん細胞に対しても有効と言えます。
その他に、ガンマ・デルタT細胞には、樹状細胞のようにがんの目印をCTLに伝えるという機能も併せ持っています。ガンマ・デルタT細胞によって、体内のCTLが活性化・増殖し、より効果的にがん細胞を攻撃するということも期待されます。
がん細胞の多くは、目印やシグナル以外にIPP(イソペンテニルピロリン酸)という物質も出しており、ガンマ・デルタT細胞には、このIPPを認識して活性化・増殖し、がん細胞を攻撃するという特徴があります。
この機能を持っている免疫細胞はガンマ・デルタT細胞だけであると言われており、他の免疫細胞ががんの目印やシグナルを見逃してしまった場合でも、ガンマ・デルタT細胞がこのIPPを認識することで、がん細胞を発見し攻撃することが期待されます。
このようにがん細胞の性質などによって攻撃をしかける免疫細胞は異なっているため、患者さんのがん細胞をきちんと調べた上で、適切な免疫細胞治療を実施することが重要となってきます。瀬田クリニックグループでは、患者さんのがんの性質を検査し、現在の治療状況も判断した上で、複数の治療法の中からもっとも効果的と考えられる治療法を選択しています。
T細胞は二つの突起から形成されるレセプターという他の細胞の情報を受け取る装置を持っています。その中でα(アルファ)鎖とβ(ベータ)鎖からなるαβ型T細胞レセプターを持つものをアルファ・ベータT細胞、γ(ガンマ)鎖とδ(デルタ)鎖からなるγδ型T細胞レセプターを持つものをガンマ・デルタT細胞と呼びます。T細胞のほとんどはアルファ・ベータT細胞に属し、ガンマ・デルタT細胞は数%程度ですが、γδ型T細胞レセプターによって多くのがん細胞から出ているIPPを認識します。