臨床症例報告No.12 (PDF版はこちら) 胃がん術後腹膜再発に対し、免疫細胞療法(CD3-LAK法)単独でPD後、 パクリタキセル併用によってgood PRとなった症例
- 種類:胃
Introduction
胃がんの罹患率・死亡率は肺がんに次いで第2位。集団検診の普及により早期胃がんの発見が増加し、様々な縮小手術も試みられているが、進行胃がんや再発例の治療成績は不良である。
Case
症例は67歳男性で、家族歴は特記すべきことなく、HCV(+)も無治療。現病歴は2002年3月25日、胃がん、下部食道浸潤にて胃全摘および下部食道切除、胸腔内Roux-Y吻合。StageIB、CEA:117.6(<5.0)は術後正常値となった。2003年4月17日、CEA:55.7に再上昇も
CT上NEDにて腹膜播種を疑われ、TS-1内服し8月7日にはCEA: 11.1まで低下したが副作用の為中止。その後またCEAは徐々に上昇し2004年6月10日にCEA:383まで再上昇を見たため、当院を紹介された。
2004年6月25日に当院を初診された。PS:0、摂食:10/10。6月18日のCT上評価可能病変は認めなかったが、CEA:383、CA19-9: 109(<37)と高値であり、weekly TXLとの併用を勧めるも、肝機能低下によりfull dose のTXLを使用できず、主治医と相談の上、2週に1回のスケジュールで活性化自己リンパ球単独療法(CD3-LAK法)を開始した。7月15日、2回目のCD3-LAK投与前より右季肋部~心窩部痛あり、次第に増強傾向にあったが非麻薬性鎮痛剤のみでコントロール可能であった。CEA:449(7/1)⇒707(7/29)⇒689(8/26)、 CA19-9:100⇒103⇒110、9月22日CT上胃吻合部裏面の軟部陰影(32×20mm)を評価病変とした。9月30日より、TXL;60mg/日2週連続投与1週休薬の抗がん剤療法を開始し、休薬週を利用して3週に1回のCD3-LAKを併用した。CEA:852(9/30)⇒427(10/27)⇒ 138(11/11)⇒19.4(12/21)⇒7.4(1/20)⇒4.7(2/24)、 CA19-9:110⇒107⇒78⇒90⇒82⇒80と著名に低下し、右季肋部~心窩部痛も鎮痛剤を要さないまでに消失したため、2005年2月24日より、TXL;60mg/日を隔週投与に緩和し、CD3-LAKも第13回目からは4週に1回の併用とした。併用中のTXLによる副作用は非常に軽微なものであり、CD3-LAKによる副作用は特に認められなかった。3月31日のCT上軟部陰影はほぼ消失しgood PRと評価したが、 4月中に歯科治療にて1ヶ月抗がん剤中断となった後、CEA:4.6 (3/24)⇒4.4(4/21)⇒8.4(5/26)、CA19-9:75⇒61⇒63と漸増を認めたため、更にTXL;60mg/日を隔週投与とCD3-LAKを4週に1回の併用を続け、7月15日現在、CEA:7.0、CA19-9:34.7と抑制中である。
Discussion
胃がんの腹膜再発の治療方法としては、抗がん剤の全身もしくは腹腔内投与が主流となる。最近の論文からTS-1治療後の2nd-lineとして比較的low doseのweekly TXLで治療した計15例の文献を拾ってみたが、CEA:800台まで上昇した状態で60mg/bodyというlow dose TXL単独投与で5ヶ月後にCEAの正常化に持ち込めることは、あまり例のないことである。もちろん、CD3-LAK単独療法ではPDであったので、この症例の場合、TXLとCD3-LAKを併用したことおよびその併用のタイミングによって相乗効果を示してきたものと考えられる。どちらかを先行すべきか、同時がよいかという問題点も含めた両者の併用療法の開始時期、施行頻度と継続期間をいかに設定しながら、腫瘍抑制とQOLの維持を達成していくかが今後の課題である。